【ソムリエアンケートVol.2】ワインセラー虎の巻 ~ソムリエが欲しいトップ4ブランドを徹底比較!(営業 西崎 隆太)

【ソムリエアンケートVol.2】ワインセラー虎の巻 ~ソムリエが欲しいトップ4ブランドを徹底比較!(営業 西崎 隆太)
Wine Bottles In Cellar

夏は30℃以上の高温が続き、冬は0℃以下、湿度も季節ごとに大きく変わる日本では、ワインを常温で保管するのは好ましくありません。 更にワインをキレイに熟成させるとなると、絶対的に不可能です。 そんな日本において、ワインの保管・熟成に適切な環境を提供してくれるのがワインセラーです。   今回のレターでは、まずワインセラーとは何かといった初歩的な情報を整理した上で、今夏に実施したソムリエアンケートで上位だった4ブランドの機能や特徴を、現在実際に使用しているソムリエさんの声も交えながら比較してみたいと思います。


【ワインセラーとは】

ワインを保存、熟成するためのワイン専用の保管庫を差します。

ヨーロッパのワイナリーでは通常、地下に設えられたカーヴでワインを熟成させています。年間を通して一定の温度と湿度を保ち、日光の当たらない薄暗く静かな地下のカーヴ・・・まさに最良のワインの保管庫です。このようなカーヴを持たない日本では、ワインの劣化を防ぐためにワインセラーが必要になります。

ワインセラーに求められるものは、以下の6点です。

1. 温度は常に12~15℃

2. 湿度は70~75%

3. 振動がなく静か

4. 日光が当たらない暗所

5. 臭いがこもらず風通しが良い

6. 横に寝かせて保管可能

現在、比較的安価なものもたくさん販売されていますが、厳密には「ワインセラー」ではなく、「ワインクーラー」と呼ばれるものが多いようです。この2つの明確な定義はないようですが、一般的に加湿機能や温度調節機能(冷却だけでなく加温)が 備わっているものを「ワインセラー」、冷却機能のみのものを「ワインクーラー」として区別しています。

【冷却システムの違い】

ワインセラーの冷却システムには大きく分けてコンプレッサー式、熱吸収式、ペルチェ式の3種類あります。

● コンプレッサー式

冷媒の気化熱を利用する冷却方式で、冷媒の循環にコンプレッサーを利用します。多くの家庭用冷蔵庫や業務用ショーケースなどに採用されており、中型~大型のワインセラーの主流はコンプレッサー式です。

メリット : 冷却力に優れ、省エネ性が高いこと

デメリット : 家庭用冷蔵庫と同程度の音がある

● 熱吸収式

コンプレッサー式と同様に冷媒の気化熱を利用する冷却方式ですが、冷媒にアンモニアを使用し、冷媒の循環にはヒーターを利用します。

メリット : 無音・無振動であること、経年劣化が少ないこと

デメリット : コンプレッサー式よりも多くの電力が必要、冷却パワーが弱く庫内温度に影響が出やすい

● ペルチェ式

冷却と加熱の運転を行って庫内の設定温度を安定的にキープします。

メリット : 音や振動が少ない、湿度をある程度は自然に保つことができる

デメリット : 冷却効率が悪く力が弱い(そのため小型ワインセラーに利用)、多くの電力を必要とする

【ワインセラー選びのポイント】

ワインセラーを選ぶ時に最も重要なのは、収納本数、タテ・ヨコ・奥行のサイズ、価格(電気代含む)の3つですが、以下の項目も考慮すると更に失敗のない選択が可能になります。

● ヒーター付き

寒冷地でワインセラーを使用する際には、温度の下がり過ぎに注意が必要です。ヒーター付きであれば、10℃以下になれば加温して庫内の温度を一定に保ちます。

● 2つ以上の温度帯設定可能

大きなセラーは置けない、適温ですぐにサービスできるように保管する目的のみ、といった条件であれば、便利なのが1つのセラー内で温度帯を分けられるタイプです。サービスする温度帯が異なる赤・白・スパークリングを1台で保存できます。

ただし、多温度帯のセラーは庫内に温度ムラをわざと作るために、通年で一定温度を保つことは難しいので長期熟成にはあまり向きません。もし状況が許すのであれば、長期熟成に向いた1つの温度帯のセラーを2台(赤専用・白専用として)使用するのが理想的です。

● 鍵付き

高価ワインの熟成を考えるのであれば、重要な項目です。

【人気メーカー/ブランド比較】

今夏、全国のソムリエの皆さまに現在お使いのワインセラーと欲しいワインセラーを伺うアンケートを行いました。その結果、ロングフレッシュ(フォルスター)、ユーロカーヴ、シャンブレア、ファンヴィーノの4つのブランドが圧倒的な支持を得ました。それぞれの機能と長所・短所を比較してみたいと思います。

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【まとめ】

ソムリエアンケートでは、自社設計や特注のウォークインセラーをお持ちのお客様も多くいらっしゃいました。概ねデザイン面、収納面、保存状態など全体的に満足しているという回答が多かったことが印象的でした。しかし、ウォークインセラーや備え付けのセラーはスペースと予算が必要であり、現実的には市販のワインセラーを購入される方が多いのではないでしょうか。

今回はソムリエに支持された4ブランド(メーカー)を比較しましたが、これらは世の中に数多あるワインセラーの中でも上位のものであり、機能面に関しては十分に備わっています。

では、何を基準に選ぶべきなのか?その考え方は、車選びに似ていると思います。走らない車はないようにセラーもある程度以上は必要な機能は備わっています。あとは素材やデザイン性、サイズ感、お店での使い方をご自身の感覚で判断していただけば良いのではないでしょうか。

今後、ワインセラーを購入・リプレイスなどされる際に参考にしていただければ幸いです。

※【ソムリエアンケートVol.1】はソムリエナイフについて特集を行いました。こちらもぜひご覧ください。

◇【ソムリエアンケートVol.1】
ソムリエに最も支持されるソムリエナイフとは?~メンテナンスから修理まで、疑問・質問にもお答えします!

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熟成ワインの魅力(後編)

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前編では、ワインの熟成が単なる時間の経過ではなく、構造的・化学的な変容プロセスであることを解説しました。そこには、果実味やタンニン、酸などの要素が複雑に絡み合い、時間とともに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 もに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 後編では、まずはワインの色調変化から解説し、長期熟成に適した品種や産地の特性を整理します。あわせて、品質を左右する熟成環境──保管方法や温度・湿度管理の要点についても、具体的に見ていきます。 4. 色の変化:時が刻むワインの色調の移ろい ワインの外観、特にその色調は、熟成度合いや健康状態を判断するための重要な視覚的手がかりとなります。熟成のプロセスは、ワインに含まれる色素成分(赤ワインではアントシアニン、白ワインではフラボノイドなど)が、酸化、重合、分解といった化学変化を経ることで、色調に顕著な変化を引き起こします。 赤ワインの色の変化: ・若年期(Young): 若い赤ワインは、紫や濃いルビーの色調を呈することが多く、鮮やかで密度の高い印象を与えます。特に若いカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーな

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熟成ワインの魅力(前編)

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「熟成」。ワインの世界において、この言葉は単なる時間経過以上の、複雑で深遠な意味合いを持ちます。若々しいワインが瓶の中で静かに変容を遂げ、新たな香りと味わいを獲得していくプロセスは、多くのワイン愛好家を魅了し、探求心を刺激してやみません。しかし、熟成の本質とは何か?どのような要素がワインに長期の熟成能力を与え、その過程でどのような変化が生じるのか?そして、そのポテンシャルを最大限に引き出すための理想的な環境とは? 今号と次号のコラムでは、ワインの熟成という多岐にわたるテーマを、6つの主要な側面から深く掘り下げていきます。熟成の基本的なメカニズムから、熟成ポテンシャルを持つワインの特徴、香りや色調の変化、品種やテロワールの影響、そして熟成環境を左右する保管方法まで、ワインが時を経て見せる神秘的な変容の核心に迫りながら、熟成の奥深い世界を探求していきましょう。 1. 熟成とは何か?:ワインが遂げる変容のプロセス ワインにおける「熟成」は、単なる「古くなること」とは一線を画します。それは、瓶という閉鎖された環境の中で、ワインに含まれる無数の化合物が、酸素との微細な相互作用や、互いの

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太陽光の重要性を探るー“あるかないか”ではなく“どう与えるか” (ソムリエ 織田 楽さん寄稿)

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「ワインは太陽の光に満ちた水である。―― Le vin est de l’eau emplie de soleil.」 これは、ワイン造りにおける太陽光の重要性を表したフランスのことわざです。 太陽の光がなければブドウ樹は成長せず、果実も実らず、そして熟すこともありません。光は光合成の必須要素であり、ポリフェノールの蓄積を促し、香り成分の形成にも深く関わっています。さらに、太陽がしっかりと降り注ぐ環境では湿度が低く保たれるため、カビによる病害の発生が抑えられ、健全な果実の収穫にもつながります。 しかし、太陽光の恩恵がブドウの品質にとって“絶対条件”だった時代と比べ、現代の多くの産地では状況が変化しています。今では、過剰な日射はむしろ品質を損ねる要因となり、世界各地で見られる「日焼け果」や「萎れ果」はその象徴的な例です。 本稿では、11月に筆者が訪れたチリのワイン産地でのインタビューを交えながら、太陽光がもはや単なる“恵み”ではなく、ブドウの品質を左右する「最適化すべき必須条件」となっている理由を探っていきます。 葉への作用―光合成 光・二酸化炭素・水を必要とする光合成におい

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