酸化防止 ワインサーバー&Coravinの実力を徹底検証!(商品管理部 鈴木 幸恵)

酸化防止 ワインサーバー&Coravinの実力を徹底検証!(商品管理部 鈴木 幸恵)
CORAVIN Black Logo

一旦栓を開けたワインにとって、味わいを劣化させてしまう大敵は“酸素”です。皆さまご存知の通り、酸素接触による酸化をいかに防ぐことができるかが、開けたワインを保存する際のカギとなります。   ワインの酸化を防ぐアイテムには、抜栓の後にボトル内の空気を抜いて真空にするバキュヴァンや、酸化を防ぐフィルターを使ったアンチ・オックスなど、色々な種類がありますが、中でも最も効果的だと言われているのが、ボトル内に窒素ガスを充填して物理的に酸素をシャットアウトするタイプです。そして、その代表格がボトルを内蔵する設置型のワインサーバーと、コルクに細い針を通して栓を抜くことなくワインを注げるCoravin(コラヴァン)です。


最近レストランやバーでよく見かけるようになったこれらのアイテムですが、ワインの美味しさの維持にはどれくらいの効果があるのでしょうか?そこで、最近発売された小型の設置型ワインサーバーVinoLungo(ヴィノルンゴ)とCoravinモデル1を比較検証してみました。

【実験で使用した酸化防止アイテム】

☆ VinoLungo(ヴィノルンゴ)

コンパクト&スタイリッシュでワイン2本が収納できるワインサーバー。庫内の温度設定や、一度に注ぐ量を設定でき、「セラー、サーバー、酸化防止」という1台3役の機能を備える。グラスをセットしてボタンを押すと窒素がボトル内に注入され、その圧力でワインが注がれる仕組み。

☆ Coravin(コラヴァン)

Coravinは細いニードル(針)をコルクに差し込むことにより、コルクを抜くことなくボトルの中のワインを注ぐことができるアイテム。ワインを注いだ分だけ窒素ガスが注入される。ニードル(針)を抜くとコルクが自然に元通りになり完璧に密閉されるため、ワインは酸素に触れることなくボトル内で熟成を続け、何ヶ月経ってもその味を堪能できると紹介されている。

Coravinの魅力はその小ささ。ワイングラス程度の大きさで、重さもわずか 400g と軽く持ち運びも可能。アメリカで開発され、世界的にはアルゴンガスが使用されているが、日本ではアルゴンガスの食品添加が認められていないため、窒素ガスで代用されている。

HP1

※今回はアルゴンガスと窒素ガスの両方を用意できたので、2つの違いも検証しました。

【実験概要】

☆ 使用機器
・ワインサーバー VinoLungo(窒素 純度99.995%以上)
・Coravin(窒素ガス 純度99.0%%)
・Coravin(アルゴンガス)

☆ 使用したワイン
・2014 Bourgogne Rouge / Francois d’Allaine
・2014 Ch. Petit Freylon Cuvee Sarah / Bordeaux Superieur

【実験結果】

※ あくまで弊社スタッフがテイスティングで感じた印象です。

HP2

≪VinoLungo≫

抜栓から3日目の時点では酸化の影響は感じられませんでした。抜栓したばかりのワインより少し閉じ気味ではありますが、Coravinの二つと比べると開いていて、香りも味わいも抜栓したてのものに一番近いと感じました。テクスチャーが柔らかく、伸びやかで広がりがある印象です。5日目までは一番美味しいという評価でしたが、8日目には果実味が落ち、酸が目立ってきてしまったように思いました。

≪Coravin(窒素ガス)≫

3~8日目まで酸化の影響がほとんど感じられませんでした。逆にCoravinの構造上、抜栓自体を行わず酸素を完璧に近いところまでシャットアウトできますので、栓を抜く前のワインの状態である還元の香りが感じられ、ワイン自体も抑圧的で閉じた印象でした。香りは弱いものの、味わいでは果実の甘みや強さが感じられました。

アルゴンガスと比べるとトーンが高く、骨格の中心部分がやや弱く、抜けるような感じがありました。Bourgogne Rougeの特徴であるウメ系の香りがキレイに出ていて、アルゴンガスを使ったものよりもよく取れました。

≪Coravin(アルゴンガス)≫

3~8日目まで酸化の影響がほとんど感じられませんでした。窒素ガスと同様に還元香が若干あり、ワイン自体が閉じた印象で香りは弱く感じました。8日目でも果実の甘みがしっかり感じられ、タンニンは強く骨格ががっしりとしていて、重心が低く詰まった印象がありました。3つの中で一番変化が穏やかのがこのアルゴンガスでした。

VinoLungoとCoravinでは、抜栓8日目にして大きく差が出ました。Coravinを使用したボトルは、窒素、アルゴンとも8日目になってもほとんど酸化の影響を感じませんでした。VinoLungoも5日目まではほとんど酸化の影響がなかったのですが、8日目には果実味が落ちてバランスが崩れ、提供は難しいレベルという判断になりました。VinoLungoは一度抜栓をしてから窒素ガス充填用のノズルを差し込むため、抜栓そのものを行わないCoravinが優位だったと推測できます。

しかし、Coravinを使ったワインの特徴として、還元的なニュアンスが感じられるということも分かりました。栓を抜いていないワインの状態に近く、Coravinだから還元したわけではないと考えられます。しかし、還元香はグラスを回して酸素に触れさせれば消えるので問題はありませんが、ワインが閉じていて圧縮されたように感じる&本来の豊かな香りが取りづらいという点は、グラスに注いでからもなかなか開かないという意見が多く挙がりました。

【ガスの違い】

Coravinでは無味無臭の窒素とアルゴンの2種類を検証しましたが、アルゴンの方が変化は感じづらく、窒素は微かですがトーンが高く抜けるような印象が感じられました。仮説となりますが、その理由は比重の違いによるものだと考えられます。

比重 ・・・ 窒素:1.251kgs / 1㎥、 アルゴン:1.783kgs / 1㎥、 空気:1.293kgs/1㎥

このように、空気より窒素は軽く、アルゴンは重いということになります。そのため、アルゴンはボトルの中でもワインの液面に近いところに溜まり、より酸素とワインが接するのを防ぐのではないでしょうか。

【導入するとしたら・・・コストと使い勝手は?】

さて、ガス充填型の酸化防止アイテムの性能について見てきましたが、実際に導入するとなると気になるのが費用(ランニングコスト含む)と使い勝手です。詳しく比較してみたいと思います。

☆ コスト

HP3

VinoLungoの本体価格はCoravinの3倍以上ですが、ランニングコストとなる1杯当たりに使うガスの費用には大きな差が あります。Coravinはコンパクトな分、ガスカートリッジが小さいためにガスがすぐになくなってしまうのが難点です。

☆ 使い勝手

≪VinoLungo≫
○ 温度や1回に注ぐ量を決めておけるので、オーダーが入ったらボタンを押すだけ。誰でもできて、提供までの時間が早い。
○ 澱のあるものはノズルを短くすれば対応可能。(切断するのでもう1本ノズルが必要。)

× 設置するスペース、電源が必要。
× 2本しか同時に使えない。
× ボトルの幅や高さによっては入らないものがある。

≪Coravin≫
○ 抜栓や、キャプセルを切る必要がない。
○ コルクに開けた穴は自然に閉じるので、セラーに横にして保管することも可能。
○ 場所を取らない。
○ 何本でも同時に使える。(ガス1本でワイン2~3本分しか使えないが)

× ボトルを傾けてニードルがワインに触れていないと注げないため、残量が減るとかなり傾ける必要がある。
× ボトルを傾けるので、澱があるワインには対応できない。
× コルクが脆くなっているものには使用できない。

【総括】

今回の実験では、酸化防止の実力ではCoravinに軍配が上がりました。

しかしCoravinの特徴としてワインが開きづらいということが分かりましたので、香りを楽しむタイプのワインにはあまり適さないかもしれません。またガスカートリッジが高く、1杯あたりのコストが掛かるため、安価なワインに使うというよりも、高級ワインをグラスでサービスするのに適していると言えます。

初期導入コストはかかりますが、1週間くらいで使い切るワインが多いのであれば、ワインサーバーをお勧めします。1杯あたりのコストも低く、酸化を防ぎながら本来のものに近いワインの香り、味わいを楽しむことができます。一般的にこのようなワインサーバーは4~8本入りとサイズも大きく高額なものが多いのですが、今回使用したVinoLungoはコンパクトで小規模なお店でも自宅でも置けるサイズであることは嬉しいところです。

同じ窒素を注入するアイテムでも、時間が経った後の味わいに違いがある、ということは大きな発見でした。ただし、1週間程度であれば、どのアイテムも高い効果が確認できました。導入を検討される際には、用途に応じてコストや使い勝手などを検討して最適のものをお選びいただくことをお勧めします。

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