あなたはどのワインが好きですか?一般消費者100人にフィラディスが直接聞いてみました! (人事 間中 昌子)

あなたはどのワインが好きですか?一般消費者100人にフィラディスが直接聞いてみました! (人事 間中 昌子)
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「おいしい白ワインを探しているのですが」 「フルボディーの赤ワインください」 お店にいらっしゃるお客様からのこんな一言を受けて、皆さんはどんなテクニックでそのお客様の求めているワインを導き出すのでしょうか? フィラディスのメンバーは、皆さんのように日常的にエンドユーザーの方々と接していないので、そのテクニックはありません。でも、一般の方がよく使う『おいしい白ワイン』、『フルボディーの赤ワイン』という表現、一体どんなタイプのワインをイメージされているのか知りたい。また、どんなタイプのワインを“美味しい”と思うのか知りたい。ならば実際に聞いてみよう、というのが今回の企画です。


アンケートは、フィラディスのお客様3店舗様のご協力を得て、約100名の方にブラインドテイスティングを実施。3店のうち2店で実際にアンケート部隊となった私が、その結果をレポートしたいと思います。

アンケート用紙の内容

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実験方法

ブラインドでティスティングして、上記のアンケートに答えて頂く。

→アンケートへの記入が終わったところで、実はこういう違いがあったんですよ、と種明かしをする。

【白ワインの好み】

<用意したワイン>

白・熟成に樽を全く使っていない(ステンレス)

白・ほのかに樽の香りがある

白・樽の香りが強い

しばしばフィラディスのお客様から、“樽の効いた白探してるんだけど”というリクエストを頂きますが、フィラディスのメンバーは、もともと樽が強く効いている白ワインをあまり好みませんし、それ故ラインナップにもそういう白は揃えていません。でも、こうしたお問い合わせを頂くということはそういうニーズがあるということ。では、実際にどれくらいの方が樽の効いたタイプのワインを美味しいと思うのか知りたいと思ったので、今回白ワインについては、樽使いの好みを聞いてみることにしました。

ワインは樽の出方の部分で評価が分かれるよう、品種は全てシャルドネとし、果実のボリューム、酸の出方、レベル感がなるべく同じ程度で、価格帯も合わせて用意しました。

Q1. 1~3の白ワインの中で、 いちばん好みのワインは どれですか?

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実験をする前は前述のようなリクエストを頂く機会が多いので、バリックが強く効いてるワインが人気なんだろうな、と予想していました。ですがご覧の通り、いちばん人気はステンレス熟成の白だったのです。あれれ…。また、実は年代別にも好みの傾向があり、20代でステンレスを選んだ人は極端に少なく、2番と3番合わせて9割近くとなりました。ところが30~40代では逆転してステンレスタイプが1位に。ワイン経験値の少ない20代は、印象の強い樽が効いたタイプを美味しいと感じ、経験値の上がった30代以上は、樽感以外の、果実のふくよかさや酸のきれいさなど他の要素もきちんと味わいながら、自分の好みを見つけている、といったところでしょうか。

このようにリサーチしてみると、樽が効いているワインを美味しいと思う方は一定数いらっしゃいますが、ダントツという訳ではありませんでしたので、そこまで好みの決定要因ではないというのが結論です。今回は料理と合わせず、ワイン単体で比較して頂いたので、皆さんが美味しいと感じるかどうかは、樽なり、果実感なり、味わいが分かりやすいかどうかがポイントだったというのが、私がみなさんとお話しした感触です。もし料理と合わせて召し上がって頂いた場合には、単体の分かりやすさとは、ポイントが違って来ることは間違いありません。

今回このように数字で出してみて初めて、”一般の方には樽が効いた白が人気”というのが、何となく出来上がっていた固定概念だったことがわかりました。

【フルボディーの赤ワインはどれ?赤ワインの好みは?】

<用意したワイン>

  1. 赤・タンニンの強さが際立っている

  2. 赤・タンニンと果実のバランスがよい

  3. 赤・果実の強さが際立っている

タンニン、果実のパワーがそれぞれ顕著に現れているものと、両方のバランスが取れているものを用意しました。こちらも価格帯を揃えて、ワイン自体のストラクチャーの強弱に左右されないようにしています。

Q2. 4~6の赤ワインの中で、 いちばん『しっかりフルボディー』 だと思うワインはどれですか?

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うーん、圧倒的に果実のパワーが強いタイプを“フルボディー”と表現される方が多いですね。男女とも半数超えです。

アタックの印象が強く、そのまま果実のボリューム感が持続するこちらのワインをフルボディーと思われる人が多いのは、納得の結果です。対して、タンニンタイプを選んだ人は全体で 11.7%と少ないのですが、男女別に注目してみると、女性が 6.5%に対し、男性は 16.7%。男性の方が渋い=フルボディーと感じる傾向です。年代別では、20 代は 85%の人が果実タイプを選んでいますが、年代が上がるにつれて、果実タイプの比率が下がり、バランスタイプの比率が上がっていきました。ここでも年齢とともに、インパクト重視からじっくりと味わって結論を出すようになっていくことわかります。

ここで残念だったのが、お話しをする中で、果実タイプを“タンニンがしっかりしたワイン”と表現した方が数名いらっしゃったことです。“果実のボリューム”と”タンニンしっかり”が混同されていて、今回の 3 番のワインのように果実のボリュームが強く、スケール感の大きいワイン=タンニンも強いワインと思っていらっしゃいました。

Q3. タイプの違うフルボディーの 赤ワイン 3 種、いちばんの好みは どれですか?

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果実のインパクトと濃厚さがいちばん人気です。ただし男女別にみると、男性はタンニンタイプが全体の 3 割超え。男性はどっしりとしたタンニンの存在感に魅かれる方も多いようです。一方女性の場合、タンニンタイプは最下位で果実タイプが全体の約半数。イメージ通りですが、女性はタニックなワインはあまり好まず、ボリュームのあるフルーツ感に魅力を感じています。

年代別では、20~30代は果実タイプが1位でしたが、40代以降はタンニンタイプやバランスタイプの比率が上がって来ました。

全体的に果実タイプが最も人気が高かったのは予想通りですが、今回のバランスタイプを美味しいと思った方が少なかったことは少し意外でした。他の 2 タイプに比べれば強い印象はありませんが、果実、酸、タンニンがきれいにまとまっていて、口の中で旨みが持続する美味しいワインでしたので。こういうタイプは今回のような簡単なティスティングではなかなか真価は認められづらいようです。

【テイスティングを終えて】

アンケートが終わって、回答頂いた方々に種明かしをしました。白は全部シャルドネで同じ品種なんですよ、お伝えすると、“えーっ”と驚く方がたくさん。品種が同じでも、熟成方法によってここまで味わいが違うことに驚かれているご様子でした。例えばステンレス熟成の白ワインがお好みだった方には、「次回はお店で、“樽を使ってなくて、果実味の豊かな白”とリクエストしてみてください」と、ご自身の回答に合わせたワインのオーダーの仕方をご提案したところ、皆さんから「すごく参考になった!」とか「次からそう言ってみますね!」と感謝のお言葉を頂きました。ワインに興味は持っているし、いつもよりちょっとぐらい高くても美味しいワインが飲みたいと思っている方はたくさんいらっしゃいました。でも、お店の方にどうやって自分の好みを伝えたらいいか分からないし、せっかくワインを買うなら外したくない、という思いで一度飲んで美味しかったものをリピートしてしまう…。

今回の実験で感じたのは、ワインに興味がある方は、種明かしをして説明をすると、かなり興味を持って聞いてくださる、ということです。「バニラっぽい香りがしませんか?」とお聞きして、ご自身でその香りがわかった時は、なるほど、という顔で喜んでいらっしゃいました。こういう簡単なことでも、ワインの楽しみはお伝えできるのですね。自分からはなかなか突っ込んで勉強してみようというところまで達していない一般の方々に、こちらからちょっとした情報をご提供することが、今まで踏み込めなかった領域に一歩足を踏み出すきっかけになれたようです。改めて、ワインの楽しみを伝える方の大切さを実感しました。

今回のように一般の方にちょっとしたアドバイスが出来るいちばんの機会は、皆さんとお店にいらっしゃるお客様との普段の会話の中だと思います。「専門的なことを言われそうで、ちょっと聞きにくい、相談しにくい」と思っていらっしゃる方々に、ちょっと引き上げる手助けをしてあげることで、その方にとっては、単に“ワインを飲んだお店”や“ワインを買ったお店”から、“ワインについて教えてくれたお店”というプラスアルファの思い出がインプットされ、あのお店なら聞きやすい、とリピートして頂けるようにもなると思います。

今後も、お客様である皆さんとご一緒に、フィラディスとしても、ひとりでも多くの方々に“一歩先のワインの楽しみ”をお伝えし続けていきたいと思います。

<アンケート実施ご協力店>

千年葡萄家中野店様、神田・トラットリアジュゲム様、恵比寿・ワインマーケットパーティー様

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熟成ワインの魅力(後編)

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前編では、ワインの熟成が単なる時間の経過ではなく、構造的・化学的な変容プロセスであることを解説しました。そこには、果実味やタンニン、酸などの要素が複雑に絡み合い、時間とともに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 もに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 後編では、まずはワインの色調変化から解説し、長期熟成に適した品種や産地の特性を整理します。あわせて、品質を左右する熟成環境──保管方法や温度・湿度管理の要点についても、具体的に見ていきます。 4. 色の変化:時が刻むワインの色調の移ろい ワインの外観、特にその色調は、熟成度合いや健康状態を判断するための重要な視覚的手がかりとなります。熟成のプロセスは、ワインに含まれる色素成分(赤ワインではアントシアニン、白ワインではフラボノイドなど)が、酸化、重合、分解といった化学変化を経ることで、色調に顕著な変化を引き起こします。 赤ワインの色の変化: ・若年期(Young): 若い赤ワインは、紫や濃いルビーの色調を呈することが多く、鮮やかで密度の高い印象を与えます。特に若いカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーな

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熟成ワインの魅力(前編)

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「熟成」。ワインの世界において、この言葉は単なる時間経過以上の、複雑で深遠な意味合いを持ちます。若々しいワインが瓶の中で静かに変容を遂げ、新たな香りと味わいを獲得していくプロセスは、多くのワイン愛好家を魅了し、探求心を刺激してやみません。しかし、熟成の本質とは何か?どのような要素がワインに長期の熟成能力を与え、その過程でどのような変化が生じるのか?そして、そのポテンシャルを最大限に引き出すための理想的な環境とは? 今号と次号のコラムでは、ワインの熟成という多岐にわたるテーマを、6つの主要な側面から深く掘り下げていきます。熟成の基本的なメカニズムから、熟成ポテンシャルを持つワインの特徴、香りや色調の変化、品種やテロワールの影響、そして熟成環境を左右する保管方法まで、ワインが時を経て見せる神秘的な変容の核心に迫りながら、熟成の奥深い世界を探求していきましょう。 1. 熟成とは何か?:ワインが遂げる変容のプロセス ワインにおける「熟成」は、単なる「古くなること」とは一線を画します。それは、瓶という閉鎖された環境の中で、ワインに含まれる無数の化合物が、酸素との微細な相互作用や、互いの

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太陽光の重要性を探るー“あるかないか”ではなく“どう与えるか” (ソムリエ 織田 楽さん寄稿)

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「ワインは太陽の光に満ちた水である。―― Le vin est de l’eau emplie de soleil.」 これは、ワイン造りにおける太陽光の重要性を表したフランスのことわざです。 太陽の光がなければブドウ樹は成長せず、果実も実らず、そして熟すこともありません。光は光合成の必須要素であり、ポリフェノールの蓄積を促し、香り成分の形成にも深く関わっています。さらに、太陽がしっかりと降り注ぐ環境では湿度が低く保たれるため、カビによる病害の発生が抑えられ、健全な果実の収穫にもつながります。 しかし、太陽光の恩恵がブドウの品質にとって“絶対条件”だった時代と比べ、現代の多くの産地では状況が変化しています。今では、過剰な日射はむしろ品質を損ねる要因となり、世界各地で見られる「日焼け果」や「萎れ果」はその象徴的な例です。 本稿では、11月に筆者が訪れたチリのワイン産地でのインタビューを交えながら、太陽光がもはや単なる“恵み”ではなく、ブドウの品質を左右する「最適化すべき必須条件」となっている理由を探っていきます。 葉への作用―光合成 光・二酸化炭素・水を必要とする光合成におい

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