ブルゴーニュ出張報告 オスピス・ド・ボーヌ&ブルゴーニュ2012ヴィンテージ (営業 池田 賢二)

ブルゴーニュ出張報告 オスピス・ド・ボーヌ&ブルゴーニュ2012ヴィンテージ (営業 池田 賢二)
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11 月第 3 週、今年で第 153 回目となるオスピス・ド・ボーヌに参加してきました。 オスピス・ド・ボーヌは、11 月第 3 日曜日に世界各国のバイヤーや観光客などが、小さなボーヌ市内に集結する一大イベントです。このチャリティーオークションは、2005 年から世界的なオークションハウスであるクリスティーズが運営を任されるようになり、一般顧客も参加できるようにするなど積極的なプロモーションによって、今まで以上に世界各国からの注目が高まっています。実際、オークション前日に開かれたテイスティング会場には、多くの中国・アジア系のバイヤーも参加していました。


オスピス・ド・ボーヌ 最新情報

今回のオークション対象となる 2013 年ヴィンテージは、天候に恵まれず、Volnay, Pommard周辺を襲った雹害の影響もあって、生産量が大きく減少。出品数は 443 樽(少なかった昨年でも 518 樽)と、過去30 年で最も少ないヴィンテージとなりました。

オークションは好調で、過去最高の総売上金額 630 万ユーロにも達し、一樽あたりの平均価格は、13,013 ユーロと前年比 26.6%も増加しました。特に中国・アジア人の落札が目立ち、実際に「La Piece des Presidents(会長の樽)」と呼ばれるMeursault 1er Cru Genevrieres Cuvee Philippe Le Bonを 131,100 ユーロ(約 1,800 万円)で、オークション史上初めて中国人の女性が落札しました。

今回、私も初めてオークションに参加しましたが、想像を超える価格で次々と落札される状況に圧倒されました。近年、新興市場へも輸出が非常に伸びているブルゴーニュワインマーケットの勢いを改めて実感しました。

オスピス・ド・ボーヌの落札価格は、当然ネゴシアンが買い付けるブドウやバルクワインの価格に影響してきますので、今後も更なる価格高騰が確実視されています。

生産者訪問と 2012 ヴィンテージ最新情報

オスピス・ド・ボーヌの翌日から、フィラディス取扱いのブルゴーニュ各生産者も訪問してきました。

2012 年ヴィンテージは、4 月から 6 月まではとても寒い春が続き、湿度も高く病害の危険にさらされ、例年よりも開花が遅れました。そして、6 月 30 日と 8 月 1 日にコート・ド・ボーヌで雹害が起こり、収量に大きな影響を及ぼしました。しかし、7 月中旬から順調に天候が回復し、9 月は晴天に恵まれ、昼夜の温暖差も理想的だったことでブドウはゆっくりと熟し、9 月中旬から収
穫が始まりました。

2012 年のCote de Nuitsは、春の厳しい寒さの中で、どれだけ丁寧な畑作業を出来たのかが結果的に重要なポイントになりました。その地道な作業を怠らなかった生産者に関しては、非常に素晴らしいクオリティーを感じるヴィンテージと評価されています。リニエ・ミシュロのヴィルジル氏は、「開花から収穫がほぼ 100 日、ポリフェノールの熟度も良好で、今までで最も理想的なタイミングで収穫が出来た。自分の造りたかったワインのイメージに最も近いヴィンテージ」と、太鼓判を押していました。

確かに、テイスティングしたワインは、果実の凝縮感が素晴らしく、糖度、酸度共に良好で、ブルゴーニュらしい繊細さ・美しさもしっかりと備わっていました。

ただ残念なのは、大幅な収量減となってしまった事です。ジュブレ・シャンベルタンのドメーヌ・デュロシェでは、2012 年は前年比で約 25%減、豊作だった 2009 年と比べると 50%近く減少したことになります。ちなみに、2013 年は前年比で約 25%増と若干改善するものの、まだまだ厳しい状況が続くそうです。

一方、Cote de Beauneに関しては、先述のとおり雹害による収量減が大きな問題となりました。バターフィールドで通常の 50%減、レイモン・デュポン・ファンでも 55%減と聞いた時には、あまりの状況に声も出ませんでした。そして、2013 年も同様に雹の被害が大きく、ここ数年大きな収量減が続いてしまっています。しかし、2012 年のクオリティーに関しては、白ワイン・赤ワイン共に自信を持ってお薦めできます。特に白ワインは、結実不良を起こしたブドウも多く、繊細ながらも非常に熟した果実味が特徴的ですし、酸も非常に良いレベルが保たれていました。

ブルゴーニュマーケットの展望

ブルゴーニュは、もともと生産量が限られたワイン産地ですが、ここまで収量が取れないヴィンテージが続いてしまうと、さすがに現行ヴィンテージの蔵出し価格の高騰は避けられません。

そして、この状況は更にバックヴィンテージの価格にまで波及しています。その要因として、まずワイナリーがこの厳しい収量減に伴う生産量の減少を少しでも補うために、蔵に残っている少し前のヴィンテージを合わせてリリースしている事があります。また、現行ヴィンテージの品薄により、すでにマーケットに出ているワインへも需要が流れ、バックヴィンテージも品薄状況になっています。

この 2 つ事実に、さらにオスピス・ド・ボーヌでも痛感させられた世界需要全体の拡大が、より一層の価格上昇に拍車をかけているのです。私も今回のブルゴーニュ出張に行く前までは、当社バイヤーからよく聞かされていたブルゴーニュの高騰を少し楽観視しているところもありましたが、現地で目の当たりにした現実は想像以上のもので、改めて危機感を感じています。

ワイン業界で働く私達にとって、このような現状は決してプラスになる話ではありません。しかし、インポーターとしてマーケットの正確な情報をお伝えする義務があると信じています。そして、このような状況の中でも、お客様に満足して頂ける素晴らしいワインを見つけていくことが、フィラディスの使命だと思っています。

最後に強くお伝えしたいことは、2012年のブルゴーニュはクオリティーに優れた押さえるべきヴィンテージだということです。限られた生産量で、価格高騰も避けられませんが、皆様に満足して頂けるものと強く信じています。今年のリリースまでしばらくかかりますが、楽しみにお待ち下さい。そして、2014 年の豊作を皆で祈りましょう。

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熟成ワインの魅力(後編)

熟成ワインの魅力(後編)

前編では、ワインの熟成が単なる時間の経過ではなく、構造的・化学的な変容プロセスであることを解説しました。そこには、果実味やタンニン、酸などの要素が複雑に絡み合い、時間とともに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 もに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 後編では、まずはワインの色調変化から解説し、長期熟成に適した品種や産地の特性を整理します。あわせて、品質を左右する熟成環境──保管方法や温度・湿度管理の要点についても、具体的に見ていきます。 4. 色の変化:時が刻むワインの色調の移ろい ワインの外観、特にその色調は、熟成度合いや健康状態を判断するための重要な視覚的手がかりとなります。熟成のプロセスは、ワインに含まれる色素成分(赤ワインではアントシアニン、白ワインではフラボノイドなど)が、酸化、重合、分解といった化学変化を経ることで、色調に顕著な変化を引き起こします。 赤ワインの色の変化: ・若年期(Young): 若い赤ワインは、紫や濃いルビーの色調を呈することが多く、鮮やかで密度の高い印象を与えます。特に若いカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーな

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熟成ワインの魅力(前編)

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「熟成」。ワインの世界において、この言葉は単なる時間経過以上の、複雑で深遠な意味合いを持ちます。若々しいワインが瓶の中で静かに変容を遂げ、新たな香りと味わいを獲得していくプロセスは、多くのワイン愛好家を魅了し、探求心を刺激してやみません。しかし、熟成の本質とは何か?どのような要素がワインに長期の熟成能力を与え、その過程でどのような変化が生じるのか?そして、そのポテンシャルを最大限に引き出すための理想的な環境とは? 今号と次号のコラムでは、ワインの熟成という多岐にわたるテーマを、6つの主要な側面から深く掘り下げていきます。熟成の基本的なメカニズムから、熟成ポテンシャルを持つワインの特徴、香りや色調の変化、品種やテロワールの影響、そして熟成環境を左右する保管方法まで、ワインが時を経て見せる神秘的な変容の核心に迫りながら、熟成の奥深い世界を探求していきましょう。 1. 熟成とは何か?:ワインが遂げる変容のプロセス ワインにおける「熟成」は、単なる「古くなること」とは一線を画します。それは、瓶という閉鎖された環境の中で、ワインに含まれる無数の化合物が、酸素との微細な相互作用や、互いの

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太陽光の重要性を探るー“あるかないか”ではなく“どう与えるか” (ソムリエ 織田 楽さん寄稿)

太陽光の重要性を探るー“あるかないか”ではなく“どう与えるか” (ソムリエ 織田 楽さん寄稿)

「ワインは太陽の光に満ちた水である。―― Le vin est de l’eau emplie de soleil.」 これは、ワイン造りにおける太陽光の重要性を表したフランスのことわざです。 太陽の光がなければブドウ樹は成長せず、果実も実らず、そして熟すこともありません。光は光合成の必須要素であり、ポリフェノールの蓄積を促し、香り成分の形成にも深く関わっています。さらに、太陽がしっかりと降り注ぐ環境では湿度が低く保たれるため、カビによる病害の発生が抑えられ、健全な果実の収穫にもつながります。 しかし、太陽光の恩恵がブドウの品質にとって“絶対条件”だった時代と比べ、現代の多くの産地では状況が変化しています。今では、過剰な日射はむしろ品質を損ねる要因となり、世界各地で見られる「日焼け果」や「萎れ果」はその象徴的な例です。 本稿では、11月に筆者が訪れたチリのワイン産地でのインタビューを交えながら、太陽光がもはや単なる“恵み”ではなく、ブドウの品質を左右する「最適化すべき必須条件」となっている理由を探っていきます。 葉への作用―光合成 光・二酸化炭素・水を必要とする光合成におい

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