理想のプロヴァンスを求めて (営業 池松 絢子)

理想のプロヴァンスを求めて (営業 池松 絢子)
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2年に1度開かれるローヌ、プロヴァンス、ラングドック、ルーションなど南仏のワインが一堂に集まる展示会“Vinisud”への参加する為、2月の末にフランス随一の学園都市モンペリエに行ってきました。出展者が1,200を超える想像以上に大きな展示会で、世界中から多くのバイヤーが集まっており、南仏ワインへの需要の高さを感じることができました。 今回私たちが探して来たのは、プロヴァンスです!


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他の産地には目もくれず、3日間徹底的にプロヴァンスの試飲を行いました。プロヴァンスは生産量の約8割をロゼが占める珍しい産地です。人生で初めてたくさんのロゼワインを飲み比べる貴重な経験ができ、すっかりロゼワイン好きになって帰ってきました。白や赤も合わせて、恥ずかしながらバンドールやパレット以外はひとまとめでプロヴァンスとしか認識していなかった私が、おおまかではありますがエリアごとの特徴を勉強できましたので、皆様にお伝えできればと思います。

下が、プロヴァンスの全体図になります。プロヴァンス内のAOCは下記のように細かく分かれています。

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<グランクリュクラス>

Cassis、Bandol、Palette、Bellet

<プルミエクリュクラス>

Cotes de Provence Sainte Victoire

Cotes de Provence Frejus

Cotes de Provence La Londe

この3つのAOCは明確な個性を持つ為、2005年にSainte VictoireとFrejusが、そして2008年にLa LondeがCotes de Provenceから独立する形で認められました。

<その他>

Cotes de Provence

Coteaux d’Aix en Provence

Les Baux de Provence

Coteaux Varois en Provence

<各AOCの特徴>

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まず土壌が粘土石灰かシストかで味わいのアフターに違いが感じられ、受ける印象が大きく異なりました。最も差が分かりやすいのが、強い石灰を持つCotes de Provence Saint Victoireと、全体的にシストだらけのCotes de Provence La Londeではないかと思います。土壌がシストであれば、ミネラル感は太く柔らかく感じられ、タイトな印象にはならず、石灰質が強い土壌で生まれるものであれば、ロゼでもミネラルや酸の強いしっかりとした引き締め感を持っていました。

一番大きな差に繋がるのは土壌かと思いますが、それに加えて更に 2 つの要因で味わいが異なっていました。

ひとつめは山側か海側かという点です。海側であれば年間を通して温暖な地中海性気候の影響を受け、山側では山岳性の気候条件となっていますので、前者はおおらかで、後者は厳格な雰囲気を持っているように感じられました。これも山側のCotes de Provence Saint Victoireと、海に接したCotes de Provence La Londeの持つ特徴の差に繋がっているのだと思います。

ふたつめは西側か東側かの違いです。これはプロヴァンスならではだと思うのですが、西側はミストラル(ローヌ川に沿って吹く非常に強い季節風)の影響を濃く受ける事から、タイトで厳しい印象を受ける味わいとなり、東側は同じ土壌であってもそのようには感じられませんでした。この差が最もわかりやすいのが、Coteaux d’Aix en ProvenceとCoteaux Varois en Provenceの違いです。土壌は同じ粘土石灰になりますが、ミストラルの影響を受けないCoteaux Varois en Provenceは、全体的に柔らかい印象を受けました。

このように、どのような味わいのプロヴァンスを求めるかで、どのエリアに畑を持つワイナリーに注目すれば良いか、全体像としてつかむことができたのは私にとって大きな収穫となりました。

【理想のプロヴァンスとは】

世界的には(特にアメリカやヨーロッパ内では)空前のロゼワインブームと言われてしばらく経ちますが、それにほとんど引っ張られることがなく大きな伸びを見せていないのが日本のロゼワイン市場の現状かと思います。Vinexpo2014 に先立って発表された今後の消費予測でも、日本での 2017 年のロゼ消費量は僅か 3.7%という数字でした。

日本のロゼワイン市場を見てみると、フランスのロゼで見かけるものといえば、カベルネフランから造られるタイトな印象の強いロワールのロゼか、中華とのマリアージュが王道と言われる力強いタヴェルロゼ、そして残るひとつがプロヴァンスかと思います。それぞれ素晴らしい個性を持っていますが、その中で日本人の繊細な味覚で素直に楽しめるのは、ふんわり柔らかいプロヴァンスのロゼが一番ではないかと今改めて感じています。

そして今回、取り扱い候補のワイナリーを選ぶ上で、白のクオリティの高さも重要視しました。プロヴァンスの白は生産割合がロゼに比べ圧倒的に少ないこともありあまり多くは見かけませんが、ロール(ヴェルメンティーノ)、セミヨン、ユニ・ブラン、グルナッシュ・ブラン、クレレット、ブールブーランから、クオリティの高いものが造られていました。ぜひ合わせてご注目頂ければと思っています。

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熟成ワインの魅力(後編)

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前編では、ワインの熟成が単なる時間の経過ではなく、構造的・化学的な変容プロセスであることを解説しました。そこには、果実味やタンニン、酸などの要素が複雑に絡み合い、時間とともに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 もに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 後編では、まずはワインの色調変化から解説し、長期熟成に適した品種や産地の特性を整理します。あわせて、品質を左右する熟成環境──保管方法や温度・湿度管理の要点についても、具体的に見ていきます。 4. 色の変化:時が刻むワインの色調の移ろい ワインの外観、特にその色調は、熟成度合いや健康状態を判断するための重要な視覚的手がかりとなります。熟成のプロセスは、ワインに含まれる色素成分(赤ワインではアントシアニン、白ワインではフラボノイドなど)が、酸化、重合、分解といった化学変化を経ることで、色調に顕著な変化を引き起こします。 赤ワインの色の変化: ・若年期(Young): 若い赤ワインは、紫や濃いルビーの色調を呈することが多く、鮮やかで密度の高い印象を与えます。特に若いカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーな

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熟成ワインの魅力(前編)

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太陽光の重要性を探るー“あるかないか”ではなく“どう与えるか” (ソムリエ 織田 楽さん寄稿)

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「ワインは太陽の光に満ちた水である。―― Le vin est de l’eau emplie de soleil.」 これは、ワイン造りにおける太陽光の重要性を表したフランスのことわざです。 太陽の光がなければブドウ樹は成長せず、果実も実らず、そして熟すこともありません。光は光合成の必須要素であり、ポリフェノールの蓄積を促し、香り成分の形成にも深く関わっています。さらに、太陽がしっかりと降り注ぐ環境では湿度が低く保たれるため、カビによる病害の発生が抑えられ、健全な果実の収穫にもつながります。 しかし、太陽光の恩恵がブドウの品質にとって“絶対条件”だった時代と比べ、現代の多くの産地では状況が変化しています。今では、過剰な日射はむしろ品質を損ねる要因となり、世界各地で見られる「日焼け果」や「萎れ果」はその象徴的な例です。 本稿では、11月に筆者が訪れたチリのワイン産地でのインタビューを交えながら、太陽光がもはや単なる“恵み”ではなく、ブドウの品質を左右する「最適化すべき必須条件」となっている理由を探っていきます。 葉への作用―光合成 光・二酸化炭素・水を必要とする光合成におい

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