イタリア出張報告 ~モンタルチーノで出会った特殊な仕立て「フォーク」と「盆栽」とは?!(営業 青山マルコ)

イタリア出張報告 ~モンタルチーノで出会った特殊な仕立て「フォーク」と「盆栽」とは?!(営業 青山マルコ)
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Salve a tutti! 営業の青山マルコです。 このレターでも度々お伝えしていることではありますが、偉大な生産者たちは必ず何度も強調して「ワイン造りで一番重要なのは畑仕事である」と口にします。私はその言葉を聞くたびにいかに畑仕事が大事なのかを改めて実感します。MianiのEnzo Pontoni、ClericoのDomenico Clerico、QuintodecimoのLuigi Moio・・・私がこの言葉を聞いた生産者は皆毎日畑に出て仕事をしていました。そして、今年3月下旬のイタリア出張では、この言葉の重みを再度感じることになりました。


フォルチェッラ(フォーク状のもの)

今回の出張の大きな目的は2つ。イタリア最大のワイン見本市Vinitalyヴィニタリーへの参加、そしてBrunello di Montalcinoの生産者訪問です。

モンタルチーノ村で、昨年から取り扱いを開始したMastrojanniマストロヤンニを訪問した際、今まで見たこともないブドウの仕立て方を目の当たりにしました。それはMastrojanniのディレクターAndrea Machettiアンドレア・マケッティがフォルチェッラ(フォーク状のもの)と呼んでいるグイヨを変形させた仕立て方でした。通常のグイヨでは1本の蔓だけを残して仕立てるところ、あえて蔓を2本残し、その2本の蔓の高さを変えて2段になるように仕立てるのです。あえて上下に高さを変えてブドウを実らせることにより1本の木で熟度の違う2種類のブドウを収穫し、ワインに複雑味を与える事を目的としています。

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明確な熟度の違いを出すには当然収穫は上の段と下の段で別々に行う必要が あります。実際にどのように行うかというと、最初に酸度を重要視して下の段の収獲を行い、次に1週間ほど間をおいて今度は果実味を重要視してよく熟させた上の段の 収穫に取り掛かります。発酵も、下の段のブドウはトコンコニックで行い、上の段のブドウはセメントタンクで行われ、後でアッサンブラージュされるのです。

区画毎の収穫は当然何処のワイナリーもやっていることですが、1つの畑で同じ葡萄の木から時期をずらして2回収穫するという単純に手間が二倍掛かる作業を行っていると聞いたのはここMastrojanniが始めてでした。

このフォルチェッラというブドウの仕立て方のように、自分達が信じたやり方がどんなに手間が掛かっても、それを信じてやり通す様はまさに「ワイン造りで一番重要なのは畑仕事である」という言葉を思い起こさせてくれるものでした。

仕立て方というたった1つの作業まで手間隙を惜しまない姿勢、それはこの他の気が遠くなるくらいたくさんある畑作業の工程全てに共通しています。このような背景を経てリリースされるMastrojanniのワインだからこそ、難しいとされるヴィンテージでも非常にクオリティー高く仕上げられるのだと納得せざるを得ませんでした。

Bonsai 盆栽

またMastrojanniに隣接する同じくBrunello di Montalcinoの生産者Podere Le Ripiポデレ・レ・リピでは更に変わった仕立て方でワインを生産しています。このPodere Le RipiのオーナーはMastrojanniの社長も兼任しているコーヒーで有名なイリーグループのFrancesco Illyフランチェスコ・イリー氏で、その風貌からも分かるように個性的で突き抜けた人物である事でも有名です。

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その更に変わった仕立て方と言うのは一見アルベレッロ仕立て(株仕立て。 南イタリアやシチリアなど日差しが強くて乾燥していて砂地がメインの地域で多く使われる)の様に見えるかなり低い仕立てなのですが、アルベレッロの様に横に広げずまっすぐ上に伸ばすだけのシンプルな仕立てです。Francesco Illyはこの仕立て方を盆栽Bonsaiと呼んでおり、このBonsaiという名前をRosso di Montalcinoのクリュ名に付けていました。

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モンタルチーノのように乾燥した地域とは言えない場所でここまで低い仕立て方でブドウの樹を育てるというのは、先ほどのMastrojanniのフォルチェッラ以上に手間が掛かるに違いありません。ここでもまた自分の信じたワイン造りを実現するためにひたすら畑仕事に没頭する生産者と会う事が出来ました。

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熟成ワインの魅力(後編)

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太陽光の重要性を探るー“あるかないか”ではなく“どう与えるか” (ソムリエ 織田 楽さん寄稿)

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「ワインは太陽の光に満ちた水である。―― Le vin est de l’eau emplie de soleil.」 これは、ワイン造りにおける太陽光の重要性を表したフランスのことわざです。 太陽の光がなければブドウ樹は成長せず、果実も実らず、そして熟すこともありません。光は光合成の必須要素であり、ポリフェノールの蓄積を促し、香り成分の形成にも深く関わっています。さらに、太陽がしっかりと降り注ぐ環境では湿度が低く保たれるため、カビによる病害の発生が抑えられ、健全な果実の収穫にもつながります。 しかし、太陽光の恩恵がブドウの品質にとって“絶対条件”だった時代と比べ、現代の多くの産地では状況が変化しています。今では、過剰な日射はむしろ品質を損ねる要因となり、世界各地で見られる「日焼け果」や「萎れ果」はその象徴的な例です。 本稿では、11月に筆者が訪れたチリのワイン産地でのインタビューを交えながら、太陽光がもはや単なる“恵み”ではなく、ブドウの品質を左右する「最適化すべき必須条件」となっている理由を探っていきます。 葉への作用―光合成 光・二酸化炭素・水を必要とする光合成におい

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