ブルゴーニュ出張報告 ~収穫期のオーセロワ地区、コート・シャロネーズ地区を巡る(営業 山口 要)

ブルゴーニュ出張報告 ~収穫期のオーセロワ地区、コート・シャロネーズ地区を巡る(営業 山口 要)
2015-08-26 08.28.01

今秋ブルゴーニュを訪問しました。ブルゴーニュと言っても、今回の行き先はシャブリ南西のオーセロワ地区とコート・シャロネーズ地区。近年コート・ドールのワインの値上がりが著しいため、ブルゴーニュ好きが満足できる品質で価格が控えめなピノ・ノワールとシャルドネを探すことが出張の目的でした。


先に結論を申し上げてしまえば、今回は残念ながら目的に見合うワインは見つからなかったのですが、あまり日本では知られていないオーセロワのテロワールや産出されるワインの特徴など、現地ならではの情報を知ることが出来ました。

Auxerrois オーセロワ地区

オーセロワは、シャブリをぐるりと取り囲むように位置するグラン・オーセロワ地区の中の1つのアペラシオンで、オーセールの南部と南東部のおよそ10村を指します。

シャブリと同じく石灰質(泥灰=キンメリジャン・マール)に富んでおり、シャルドネとアリゴテ、ピノ・ノワールが有名ですが、他にガメイやソーヴィニヨン・ブランも造られています。また、オーセロワ特有の希少なブドウ品種として赤ワイン品種のセザールと白ワイン品種のサシーやムロンなどもあります。

このオーセロワで村名を名乗れる産地として、Irancy (イランシー)とSaint-Bris (サン・ブリ)があり、とても個性的なワインが造られます。

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【Irancy イランシー】

※1999年にAOCブルゴーニュ・イランシーから独立し、AOCイランシーになりました。

テロワール: ブドウ畑の斜面に囲まれた盆地で、標高は130~150m。キメリジャンの泥灰土が多く、褐色の石灰質の 表土ではピノ・ワールがよく育ちます。日照の向きは様々ですが、南・南西向きの畑が比較的多くあります。

ブドウ品種: ピノ・ノワールとセザール。ヨンヌ県で唯一、赤ワインのみが認められているAOCです。

ワインの特徴: イランシーのワインの最大の特徴は、ピノ・ノワールをメインに、伝統的品種のセザールを10%まで混ぜる ことが許されていることです。セザールは色が非常に濃く、香りが高く、タンニンが豊かな品種です。オーセロワでは日照量が少なくブドウが熟さないため概してミネラルが強くタイトなワインになります。そ のため、イランシーではセザールをブレンドして色調を濃くし、赤い果実の香りと果実味を補強するととも にしっかりとしたストラクチャーを与えて熟成ワインとしても楽しむことができるワインを造っています。

【Saint-Bris サン・ブリ】

※2003年にVDQSソーヴィニヨン・ド・サン・ブリが昇格し、AOCサン・ブリになりました。

テロワール: 土壌はオーセロワと同じく泥灰土中心で、最良の畑はブドウ が理想的に熟す北向きの斜面だと言われています。サン・ブ リもシャブリのようにすり鉢状の盆地になっており、周囲の丘 にブドウ畑が広がっています。生産者は、雨量が少ない時に は水分が蒸発しないで根にしっかりと行き届くように藁を 周りに敷きつめるといった工夫をしていました。

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ブドウ品種: 白ワインのみ。ソーヴィニヨンとソーヴィニヨン・グリ。 ブルゴーニュでソーヴィニヨンを栽培するのはサン・ブリだけです。

ワインの特徴: コート・ドーセールはシャルドネがメイン品種なのですがやはり力強さ・複雑味がやや欠け、幾分ニュート ラルな味になりがちですが、ソーヴィニヨンをメインとするサン・ブリは香りも果実味も非常に力強く味わいに 趣が感じられるものでした。色調はソーヴィニヨンから造られる淡い麦藁色または軽い黄金色であり、香り はグリーンノーズから柑橘系、トロピカルなライチなどに加えて花のニュアンスなど複雑で、アフターには スパイスやヨードが香ります。酒質の高いワインが多いため熟成にも向いており、熟成させると更に香り豊 かなワインになります。

ブドウの熟成を見極めるには?

ブルゴーニュ、コートドール南に位置する「コート・シャロネーズ」では、既存のワイナリーや取り扱いを検討しているワイナリーを訪問して回りました。

早いところではちょうど、クレマン用のシャルドネが収穫時期を迎えており、収穫を少し手伝わせてもらいました。小さい区画だったので、スタッフ全員で早朝から一気に収穫したので楽しかったのですが、粘土石灰質土壌なので靴底につく土の重さがすさまじく、短時間の手伝いなのにヘトヘトに・・・。非常に骨の折れる作業だと改めて実感しました。

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収穫の際には、ご存じのようにブドウの熟度の見極めが必要になります。ブドウの熟度を知るには、糖度(潜在アルコール度)とポリフェノール熟度が重要です。糖度については、ほぼ全ての生産者が 糖度計を使って正確に計測していますが、ポリフェノール熟度は、実際にブドウを食べてみてそのテイストを見るのと、実の中で最後に熟す「種」がどれだけ熟しているかで判断します。

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充分に熟していればブドウの種はこげ茶色になっており、まだ若いものは薄緑からほんのり茶色になるくらいです。判断する色合いは、黒ブドウ(ピノ・ノワール)でも、白ブドウ(シャルドネ)でも同じであり、ブドウの果肉の甘さや酸度よりもこの『種の熟度』で収穫する区画を決めていくそうです。

もちろん糖度も含めた総合的な判断にはなるのですが、畑で簡単にブドウの熟度を推し測るには最適な方法だと感じました。

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熟成ワインの魅力(後編)

熟成ワインの魅力(後編)

前編では、ワインの熟成が単なる時間の経過ではなく、構造的・化学的な変容プロセスであることを解説しました。そこには、果実味やタンニン、酸などの要素が複雑に絡み合い、時間とともに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 もに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 後編では、まずはワインの色調変化から解説し、長期熟成に適した品種や産地の特性を整理します。あわせて、品質を左右する熟成環境──保管方法や温度・湿度管理の要点についても、具体的に見ていきます。 4. 色の変化:時が刻むワインの色調の移ろい ワインの外観、特にその色調は、熟成度合いや健康状態を判断するための重要な視覚的手がかりとなります。熟成のプロセスは、ワインに含まれる色素成分(赤ワインではアントシアニン、白ワインではフラボノイドなど)が、酸化、重合、分解といった化学変化を経ることで、色調に顕著な変化を引き起こします。 赤ワインの色の変化: ・若年期(Young): 若い赤ワインは、紫や濃いルビーの色調を呈することが多く、鮮やかで密度の高い印象を与えます。特に若いカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーな

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熟成ワインの魅力(前編)

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「熟成」。ワインの世界において、この言葉は単なる時間経過以上の、複雑で深遠な意味合いを持ちます。若々しいワインが瓶の中で静かに変容を遂げ、新たな香りと味わいを獲得していくプロセスは、多くのワイン愛好家を魅了し、探求心を刺激してやみません。しかし、熟成の本質とは何か?どのような要素がワインに長期の熟成能力を与え、その過程でどのような変化が生じるのか?そして、そのポテンシャルを最大限に引き出すための理想的な環境とは? 今号と次号のコラムでは、ワインの熟成という多岐にわたるテーマを、6つの主要な側面から深く掘り下げていきます。熟成の基本的なメカニズムから、熟成ポテンシャルを持つワインの特徴、香りや色調の変化、品種やテロワールの影響、そして熟成環境を左右する保管方法まで、ワインが時を経て見せる神秘的な変容の核心に迫りながら、熟成の奥深い世界を探求していきましょう。 1. 熟成とは何か?:ワインが遂げる変容のプロセス ワインにおける「熟成」は、単なる「古くなること」とは一線を画します。それは、瓶という閉鎖された環境の中で、ワインに含まれる無数の化合物が、酸素との微細な相互作用や、互いの

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太陽光の重要性を探るー“あるかないか”ではなく“どう与えるか” (ソムリエ 織田 楽さん寄稿)

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「ワインは太陽の光に満ちた水である。―― Le vin est de l’eau emplie de soleil.」 これは、ワイン造りにおける太陽光の重要性を表したフランスのことわざです。 太陽の光がなければブドウ樹は成長せず、果実も実らず、そして熟すこともありません。光は光合成の必須要素であり、ポリフェノールの蓄積を促し、香り成分の形成にも深く関わっています。さらに、太陽がしっかりと降り注ぐ環境では湿度が低く保たれるため、カビによる病害の発生が抑えられ、健全な果実の収穫にもつながります。 しかし、太陽光の恩恵がブドウの品質にとって“絶対条件”だった時代と比べ、現代の多くの産地では状況が変化しています。今では、過剰な日射はむしろ品質を損ねる要因となり、世界各地で見られる「日焼け果」や「萎れ果」はその象徴的な例です。 本稿では、11月に筆者が訪れたチリのワイン産地でのインタビューを交えながら、太陽光がもはや単なる“恵み”ではなく、ブドウの品質を左右する「最適化すべき必須条件」となっている理由を探っていきます。 葉への作用―光合成 光・二酸化炭素・水を必要とする光合成におい

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