若手ソムリエ応援プロジェクト 『ペアリング理論セミナー』 最新の講義内容を公開します!(広報 浅原 有里)

若手ソムリエ応援プロジェクト 『ペアリング理論セミナー』 最新の講義内容を公開します!(広報 浅原 有里)
Waiter carrying wine glasses in restaurant

フィラディスでは、『若手ソムリエ応援プロジェクト』の一環として、毎年ソムリエの基本スキルを学ぶコース形式のセミナーを開催しています。   今回は、その中でも特に人気の高い「ペアリング理論セミナー」の内容を公開します。講師は、元銀座レカンのシェフソムリエで、現在も多数の飲食店のワインプロデュースを手がけたり、自身でもモダンベトナムレストランAn Diを経営し、ワインや日本酒のテイスターとしても活躍する大越基裕さんです。感性や地方性だけに頼らない、理論的なペアリングの考え方を解説します。   ※2013年に行ったセミナーの内容を更にブラッシュアップした最新版です。 ※本内容は、「マリアージュ理論」として行ったものです。大越先生のご意向により、現在主流になりつつある「ペアリング」という言葉を使用しています。


ペアリング理論

ずよく食べ物と飲み物の相性を語る時に、「洗い流す」「邪魔をしない」「何にでも合う」という言葉が使用されることがありますが、これらは決してペアリングではありません。その感覚ですと水で十分ということになってしまいます。

にソムリエとしてお客様に提案する立場の人であれば、なぜその飲み物でなければならないのかというロジカルな理由を持って、ペアリングを構築していく必要性があります。まずは料理とワインの味わいを明確に理解し、その後にペアリングの組み立て方を考えていきましょう。

<味わいとは? >

【五味(酸、甘、塩、苦、旨)】【刺激(渋、辛)】【フレーバー】

わいとは、酸味、甘味、塩味、苦味、旨味の五味で構成されています。舌の上にこれらを感知する受容体があって、きちんと味として認識出来るのが五味です。旨味に関しては、1908年に日本人がだし昆布から発見したのが最初。さらに2000年に舌の味蕾にグルタミン酸受容体があることが発見され、世界的に味として認められました。近年は、ワインの世界でよく聞くようになっています。

れ以外に味わいには、刺激があります。渋味と辛味はよく五味の一つに間違われますがこの二つは味というよりは刺激です。ですからワインのタンニンは、刺激になります。舌が渋味によって収斂する、乾く感じという刺激が渋味です。

うひとつ味わいには、フレーバーがあります。フレーバーは香りと同じですが、口の中に入れて飲み込む、または吐き出した時にまた戻ってくるアフターフレーバーの事を指します。実はこのフレーバーがないと味わいの詳細はほとんど分かりません。実際に鼻をつまんでワインを飲んでみると、何を飲んでいるか全く分からなくなります。そのくらいフレーバーというのは非常に大事な存在で、味わいに大きな影響を与えます。

のように、五味・刺激・フレーバーの全てが大きな意味で味わいを構成する要素です。

<ワインのストラクチャーのバランス>

ワインの味わいの構成: 【やわらかさ(甘味・アルコール)】 【厳しさ(酸・タンニン・ミネラル)】

インの味わいについて考えてみましょう。必要なのは、そのワインがどの味わいの影響でどのような骨格を持っているか、柔らかいのか固いのかといった様相を最終的に知ることです。

ワインのストラクチャー(骨格)を形作る主な要素は、甘み・アルコール・酸味・タンニンの4つです。ワインのテイスティングコメントを作るときには、どんなワインでも、必ずこの4つには触れなければいけません。

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みとアルコールの2つの要素が高いと、ワインはやわらかくリッチになります。残糖感のあるものは口当たりが柔らかく、アルコールもヴォリューム感を感じさせるため、アルコールが高ければワインは豊かでやわらかくなります。

に酸味やタンニンの要素が強いと、ワインを引き締めるストラクチャーを形成します。ただ、やわらかさと厳しさという様相は、全体のバランスによって左右されます。甘みが低いと酸味やタンニンの厳しさが引き立てられますし、酸味が低ければやわらかさをより感じるという事です。また、塩味や苦味もワイン中には微量ですが、味覚上感じられることがあるので、このバランスに影響を与えています。この2つの要素も厳しさを作ります。このようにワインの構造のバランスの要因を知ることがペアリングを作る上では重要になります。

う1つ重要なのが、テクスチャーです。テクスチャーは、ストラクチャーのバランス、フレーヴァー、食感など全てが総合的に口中で表現するワインの全体像のことです。ワインを飲んだ時に、タイトな、ソフトな、コクがある、滑らか、といった表現がテクスチャーとなります。これをゲシュタルトテイスティングとも言います。

アリングは、1つの要素のみを取り出して考えるのではなく、最も味わいに影響するストラクチャーを理解しつつ、総合的に感じられるテクスチャーを利用していかなければなりません。例えばタンニンが強いワインがこの料理に合いますよなどと言うことがありますが、「タンニンが強い」という情報だけでは足りません。バローロのようなタンニンの強さもあれば、ボルドーのようなタンニンの強さもあります。バローロの方がストラクチャーの強さがありますが、より味わいのバランスが取れていることが多いのは、若いうちは様々な品種をブレンドしたボルドーのことが多いです。なので、もちろんその様相の違いが、それぞれに合う料理を決定していくのです。

<ワインの味わいを理解する>

【甘味】【酸味】【タンニン(渋味)】【アルコールの強さ】【塩味】【苦み】 【バランス】【余韻の長さ】【強さ】【凝縮度】【複雑性】【フレーバー】【発泡性】【テクスチャー】 先ほどのストラクチャーで触れた要素に加え、ワインの質を理解するにはBLICが必要です。Balance(バランス)、Length(余韻の長さ)、Intensity(強さ・凝縮度)、Complexity(複雑性)の略ですが、これらはワインの質の良さを教えてくれます。BLICによって、例えばブルゴーニュのヴィラージュクラスとグランクリュの違いが明確になります。その他、フレーバー、発泡性などももちろん見ていく必要があります。これらの総合的なものがテクスチャーです。

<料理の味わい>

【甘味】【酸味】【塩味】【苦味】【旨味】【辛味】【脂質】【油性】 【フレーバー】【強さ】【余韻の長さ】【テクスチャー理の味わいの中には、料理にしかない要素があります。脂質と油性です。この二つはマリアージュを考える上で、常に頭に置いておかなくてはなりません。脂質とは素材自体が抱いている脂です。油性とは調理法によって与えられる油です。油脂は粘性が強いため存在感があり料理を重くします。ペアリングでは重さのバランスを考える必要があるため、油脂を無視することはできません。

えて、フレーバーや強さ、余韻、テクスチャー(料理のテクスチャーは噛みごたえを指します)などを包括的に考えます。

上のように、ワインと料理、それぞれの味わいの特徴を理解してはじめてペアリングを考えることができます。

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<ペアリングの考え方>

ペアリングの考え方としては大きく3つの考え方があります。

★ 味わいの補完作業  ★ 味わいの同調作業  ★ 味わいの干渉作業

これをより細かくすると、次の5つのペアリングのつくり方に分けることができます。

★ 中和のペアリング ★ 五味のペアリング ★ 同調のペアリング
★ 風味のペアリング ★ テクスチャーのペアリング

中和のペアリング
味や刺激の中で互いの個性を中和することができる関係を利用して味わいのバランスをとる方法です。塩気が強いブルーチーズに甘いソーテルヌを合わせる王道のペアリングもその一つです。塩気の強いものに甘いものをぶつけて味わいの中和を図っています。それでいて、互いの風味を損なわないのがポイントです。

う一つ中和のペアリングで重要なのは、油脂です。料理の持つ油の重さに対して、ワインの重さも合わせてあげる必要があります。油の重い料理の場合、その油を中和させるためにタンニンの多いワインを合わせます。カベルネ・ソーヴィニヨンに仔羊の背肉の料理を合わせるのは、まさに中和のペアリングを実践しているのです。

五味のペアリング
インと料理の双方がそろうことにより味わいの五味全てがバランス良く補完されることで、味覚的な満足感が得られます。

年和食や中華とワインのペアリングが注目されていますが、和食や中華は塩味や旨味が主体の料理が多く、甘味と酸味が主体のワインを合わせることで五味のバランスを揃えやすいことが理由だと考えられます。繊細な和食や中華にワインは強すぎると過去には言われましたが、それはお料理に対して、強すぎるワインを合わせていたから。やさしく、繊細なワインを合わせることで、非常に相性が良いことが実感できます。

同調のペアリング 
インと料理の互いの味わいの個性の一部が同調することで、フレーバーを引きたて、余韻長く双方の味わいを楽しむことが出来るペアリングで、最も作りやすいペアリングの一つです。
味のある料理に、フレッシュな酸味を持ち合わせるワインを飲むことで、味の一体感が得られ、お互いのフレーバーをより長く伸ばしてくれます。我々が最も“合っている”と感じやすいこともあり、よく使われているペアリングです。

風味のペアリング
わっているものを理解する為に最も大切なものと思われるのがフレーバーです。ワインと料理のフレーバーの方向性を合わせることでより風味の広がりや同調感、ハーモニーなどを楽しめます。香りはとても奥が深く解明されていない分野なので、ペアリングとしても様々な可能性があります。例えば、ワサビにヴィオニエを合わせてみてください。あまり相性の良さがイメージできない組み合わせかもしれませんが、ヴィオニエの持つメロンの様な香りとワサビのグリーンノートが興味深いハーモニーを作ります。フレーバーのペアリングでは、食べ方次第でもワインと料理を寄せることができます。例えばホウレンソウのお浸しにピノ・ノワールを合わせたいなら、かつお節と醤油をかけてあげれば、醤油とワインのフレーバーがより良いハーモニーを作ります。もしフルーティな白ワインを合わせたいなら、塩ポン酢やゆずポン酢をかけて上から柚子の皮を振ってあげるだけで、香りの同調感が生まれるという具合です。
こで注意しなければならないのは、フレーバーの方向性が似ていれば風味のペアリングは興味深いものになるのですが、ぴったり同じ香りのものをあてると途端につまらなくなる、ということも起こります。レモンの香りがある料理にレモンフレーバーが明確なワインを合わせても、似過ぎてしまって感動が生まれないのです。重さやボディをきっちり合わせた上で、香りの方向性だけをを合わせるくらいの方が面白くなることが多いとおもいます。とても沢山の可能性があると思うので、色々試してみてください。

テクスチャーのペアリング
感に注目した考え方であり、ワインの柔らかさと硬さのバランスや温度に対して、料理の噛みごたえや温度を合わせるペアリングです。
えばリオハやリベラ・デル・ドゥエロのワインを飲むと濃くて収斂性をしっかりと感じることが多いですが、その後我々の体はその収斂性を中和するために咀嚼をして唾液を出したいと感じます。そんな時には厚みのある牛や羊のステーキをガシガシ噛むか、あるいは油の多いお料理で中和するという2つの選択肢があります。この時、咀嚼するステーキを食べるという選択肢がテクスチャーのペアリングです。
して温度も重要なテクスチャーを形成する要素です。暖かい料理を食べる時には、冷たすぎるワインを飲むのは違和感があります。そのワインが美味しく感じられる温度帯の中ではありますが、高めの温度で提供する方が良いペアリングとなります。温めることができる日本酒はこのペアリングでは活躍します。


アリングは、素材にではなく、料理に合わせるものです。
料理の世界は、日々変化しています。香りの世界もとてつもなく広いです。そこには新たなペアリングの可能性が無限に広がっています。そんな中理論的なアプローチは、各々の感性と一緒にすることで、より早く、説得力のあるペアリングの作成へ導いてくれます。今回の理論が自分らしいアプローチを作り上げて行く基盤となり、よりレストランサービスが充実すればと思います。

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熟成ワインの魅力(後編)

熟成ワインの魅力(後編)

前編では、ワインの熟成が単なる時間の経過ではなく、構造的・化学的な変容プロセスであることを解説しました。そこには、果実味やタンニン、酸などの要素が複雑に絡み合い、時間とともに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 もに香りや味わいの深みが増していく神秘がありました。 後編では、まずはワインの色調変化から解説し、長期熟成に適した品種や産地の特性を整理します。あわせて、品質を左右する熟成環境──保管方法や温度・湿度管理の要点についても、具体的に見ていきます。 4. 色の変化:時が刻むワインの色調の移ろい ワインの外観、特にその色調は、熟成度合いや健康状態を判断するための重要な視覚的手がかりとなります。熟成のプロセスは、ワインに含まれる色素成分(赤ワインではアントシアニン、白ワインではフラボノイドなど)が、酸化、重合、分解といった化学変化を経ることで、色調に顕著な変化を引き起こします。 赤ワインの色の変化: ・若年期(Young): 若い赤ワインは、紫や濃いルビーの色調を呈することが多く、鮮やかで密度の高い印象を与えます。特に若いカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーな

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熟成ワインの魅力(前編)

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「熟成」。ワインの世界において、この言葉は単なる時間経過以上の、複雑で深遠な意味合いを持ちます。若々しいワインが瓶の中で静かに変容を遂げ、新たな香りと味わいを獲得していくプロセスは、多くのワイン愛好家を魅了し、探求心を刺激してやみません。しかし、熟成の本質とは何か?どのような要素がワインに長期の熟成能力を与え、その過程でどのような変化が生じるのか?そして、そのポテンシャルを最大限に引き出すための理想的な環境とは? 今号と次号のコラムでは、ワインの熟成という多岐にわたるテーマを、6つの主要な側面から深く掘り下げていきます。熟成の基本的なメカニズムから、熟成ポテンシャルを持つワインの特徴、香りや色調の変化、品種やテロワールの影響、そして熟成環境を左右する保管方法まで、ワインが時を経て見せる神秘的な変容の核心に迫りながら、熟成の奥深い世界を探求していきましょう。 1. 熟成とは何か?:ワインが遂げる変容のプロセス ワインにおける「熟成」は、単なる「古くなること」とは一線を画します。それは、瓶という閉鎖された環境の中で、ワインに含まれる無数の化合物が、酸素との微細な相互作用や、互いの

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太陽光の重要性を探るー“あるかないか”ではなく“どう与えるか” (ソムリエ 織田 楽さん寄稿)

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「ワインは太陽の光に満ちた水である。―― Le vin est de l’eau emplie de soleil.」 これは、ワイン造りにおける太陽光の重要性を表したフランスのことわざです。 太陽の光がなければブドウ樹は成長せず、果実も実らず、そして熟すこともありません。光は光合成の必須要素であり、ポリフェノールの蓄積を促し、香り成分の形成にも深く関わっています。さらに、太陽がしっかりと降り注ぐ環境では湿度が低く保たれるため、カビによる病害の発生が抑えられ、健全な果実の収穫にもつながります。 しかし、太陽光の恩恵がブドウの品質にとって“絶対条件”だった時代と比べ、現代の多くの産地では状況が変化しています。今では、過剰な日射はむしろ品質を損ねる要因となり、世界各地で見られる「日焼け果」や「萎れ果」はその象徴的な例です。 本稿では、11月に筆者が訪れたチリのワイン産地でのインタビューを交えながら、太陽光がもはや単なる“恵み”ではなく、ブドウの品質を左右する「最適化すべき必須条件」となっている理由を探っていきます。 葉への作用―光合成 光・二酸化炭素・水を必要とする光合成におい

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