初鰹の季節到来!鰹のたたきにぴったりのワインを検証します。(広報 浅原有里)

初鰹の季節到来!鰹のたたきにぴったりのワインを検証します。(広報 浅原有里)

今回のマリアージュ実験のテーマは鰹です。

鰹は初鰹と戻り鰹の2回の旬がある魚です。
赤道付近の海で産卵した鰹は餌を求めて北上するわけですが、北上途中の3〜5月頃に獲れる鰹が「初鰹」です。まだ若く、脂の乗りはそれほどないのでさっぱりとした味わいとなります。その後、Uターンして南下してくる鰹が「戻り鰹」と呼ばれ、8月頃から市場に出回ります。戻り鰹は北の海でたくさんの餌を食べていますので、脂が乗ってむっちりと濃厚な味わいになります。

日本人の食卓に欠かせない鰹にはどんなワインが合うのか?いざ、実験スタートです!

【実験方法】

◇ 鰹は刺し身とたたきの2種類を用意。刺し身は醤油、たたきはポン酢をつけていただきます。それぞれ生姜、みょうが、小ねぎを薬味として少量使用しました。

◇ ワインは白7種類、ロゼ1種類、赤8種類を用意しました。

【マリアージュの判断方法 】

「ボリューム」「テクスチャー」「フレーバー」「五味(甘味・酸味・塩味・苦味・旨味)」について、以下のマリアージュポイントを参考にしながら分析する。

同調 (ワインと料理の個性の一部が寄り添うことで双方を高め合う)

中和 (お互いの個性を中和させて味わいのバランスをとる)

補完 (ワインと料理の双方が揃うことで、足りなかったものを補完する)

※マリアージュ理論の詳しい内容は以下よりご覧ください

https://firadis.net/column_pro/201312

鰹に合うワインの四天王が爆誕!

刺し身とたたきで若干の違いはあるものの、結果の表から、鰹には4種類のワインがとても良く合うことが分かりました。

1.ソーヴィニヨン・ブラン

まず1つ目は、ソーヴィニヨン・ブランです。たたきではベストマリアージュとなり、刺し身でも高評価を得ました。テクスチャーやボリューム感が合っていて、ワインの甘味がとても良いバランスで五味を整えてくれました。なんと言っても、ソーヴィニヨンのハーブ香が薬味のような役割をしてドライで美しいマリアージュを演出しており、とても素晴らしい組み合わせでした。たたきではポン酢をつけたのですが、ポン酢の出汁の旨味を更に引き出して余韻長く楽しませてくれました。

2.ロゼ

大本命と予想したロゼですが、やはりさすがのマリアージュを見せてくれ、刺し身では今回のベストマリアージュでした!

赤身で鉄っぽい風味のある鰹に、ロゼの程よいタンニンと赤系果実のフレーバーがよく合いました。今回のロゼは塩味が感じられるものだったため、それが鰹の脂を中和するとともに良いアクセントとなり、爽やか&フレッシュでワインも鰹ももっと欲しくなる組み合わせでした。

3.サンジョヴェーゼ

実は、お魚料理にはサンジョヴェーゼが合う、という話をイタリアンのシェフから聞いたことがあったのですが、まさにそれが証明された形になりました。

初めて刺し身と赤ワインを合わせる方はもしかしたらアタックのタンニンに少し驚くかもしれません。実験でもスタッフによっては固いタンニンが好みではないという意見が出ていましたが、真骨頂はアフターにかけての香りの相乗です。ワインの鉄っぽさが鰹に寄り添い、サンジョヴェーゼ特有の赤系果実のフレーバーも絶妙に絡み合っていました。特にたたきには燻香があるのでワインのタンニンや樽香によく合いました。

4.ネッビオーロ

ワインが強すぎて合わないのではと危惧しましたが、 五味・フレーバー・テクスチャーなど各要素の相性が良く、鰹の風味もしっかり活かされながら鰹とワインの旨味が引き出される、滋味深く心地よいマリアージュとなりました。

ワインが若々しくタンニンが若干気になるという声がちらほら聞かれたので、今回テイスティングした2018年よりももう少しだけヴィンテージの古いワインだと尚良かったと思われます。

【まとめ 】

鰹マリアージュワインの四天王には白ワインとロゼ、赤ワインが混在する結果となりました。これほど幅広く様々なワインに合ってくれる食材はとてもめずらしいと思います。

これまでの数々のマリアージュ実験でなかなか選ばれなかったソーヴィニヨン・ブランが日の目を見た嬉しさや、大本命のロゼの正しさを証明出来た喜びもありますが、何より驚いたのは、イタリアの赤ワインの代表品種が2種類も選ばれたこと!!イタリアでは「食事をより豊かにするためにワインがある」と云われますが、まさに食事と合わせる楽しさを今回の実験で教えてくれたと思います。

今回いただいた鰹はさっぱりとした味わいでしたが、戻り鰹のようなねっとり脂が多い味わいだとまた違うワインが合うようになると思いますし、塩で食べたり、薬味は何を使うのかによっても様々に工夫が出来ると思います。この結果を参考にしていただき、ぜひご自身の納得のいくペアリングをつくってみてください。

【※この実験は緊急事態宣言前に実施しました 。】

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