【フィラディス実験シリーズ第32弾 】 春のお楽しみ♪ ホワイトアスパラにペアリングさせるならどんなワイン ?(広報 浅原有里)

【フィラディス実験シリーズ第32弾 】 春のお楽しみ♪  ホワイトアスパラにペアリングさせるならどんなワイン ?(広報 浅原有里)
ロワール3

フィラディス恒例のマリアージュ実験、今回のテーマは「ホワイトアスパラガス」です。
ヨーロッパの春の味覚として愛されるホワイトアスパラですが、最近は国産も増えて日本でも旬を味わう食材として定着してきました。
グリーンアスパラと品種が異なるわけではなく、日光に当てるか当てないかの違いしかありませんが、ホワイトアスパラはグリーンにはない独特の甘味や苦味、柔らかく繊細な歯ごたえを持っています。

今回の実験では、国産とロワール産の2種類のホワイトアスパラを用意し、それぞれ塩茹でして「塩のみ」と定番の「オランデーズソース」の2つのパターンでマリアージュするワインを探してみました。

手前:国産 奥:ロワール産

ホワイトアスパラ&ワインについて

国 産 フランス、ロワール産
福島産、暗室栽培の新鮮なホワイトアスパラを使用。2Lという国産では太めのサイズだが、ロワール産と比べると半分ほどの太さ。 味わいは、アスパラ特有の青い香りがしっかりあり、えぐみや苦味は強くなく、フレッシュかつ繊細で甘味をしっかり感じた。 ハウス栽培の生ホワイトアスパラで、十分な太さのあるものを使用。 国産よりも青い香りは控えめだが、苦味やえぐみ、ミネラル感がしっかりあり、甘味や旨味も含めた全体的な味わいが国産よりも強く感じられた。

食べ方

  • 国産/ロワール産を分けてそれぞれに最適な時間で塩茹でする。
  •  検証する味付けは2種類
    • 素材を活かすため適量の塩のみ
    • オランデーズソース(卵黄、バター、塩、レモン汁、少量の胡椒)を掛ける

ワイン

白ワインが合いやすいだろうと想定し、白14種、スパークリング8種、ロゼ2種、赤6種類を用意。 全てブラインドにて検証した。

マリアージュの判断方法

「ボリューム」「テクスチャー」「フレーバー」「五味(甘味・酸味・塩味・苦味・旨味)」について、以下のマリアージュポイントを参考にしながら分析します。

同調 (ワインと料理の個性の一部が寄り添うことで双方を高め合う) 中和 (お互いの個性を中和させて味わいのバランスをとる) 補完 (ワインと料理の双方が揃うことで、足りなかったものを補完する)

※理論的なマリアージュの考えについては、若手ソムリエ応援プロジェクトの第1回セミナーにて大越基裕講師に解説いただき、2013年12月のニュースレターで公開しております。コチラに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

第1回若手ソムリエ応援プロジェクト 『マリアージュ理論セミナー』の講義内容を公開します!

結 果

スパークリングワイン

[国 産]

様々な料理に合わせられるというイメージのスパークリングワインですが、国産のホワイトアスパラには苦戦しました。甘味が同調したり、旨味を若干引き上げるワインもありましたが、マリアージュの真骨頂である相乗効果は感じられませんでした。アスパラが繊細な味わいなので、特にシャンパーニュやロゼではワインに負けてしまってアスパラの良さが活きませんでした。

[ロワール産]

国産と異なり、ミネラル感があって味わいの強いロワール産はぐっとスパークリングワインとの相性も良くなりました。 塩とオランデーズの両方で1位に輝いた1. Brut Carte d’Or / Veuve Olivier et Fils は、ワイン自体の柔らかな味わいと熟成のニュアンス、ほろ苦さがアスパラの香りと絶妙にマッチし、アスパラの良さを活かしてくれました。特にオランデーズソースを掛けるとクリーミーさが足され、泡のクリーミーさとミネラル感がより合うようになって相乗効果を最も感じた組み合わせでした。 塩のみの同率1位となった 3. Cremant du Jura Brut / Philippe Vandelle は、果実は穏やかですが優しく上方向に味わいが広がるワインで、その上方向の味わいの伸びがアスパラの旨味を引き上げ広げてくれました。そしてアフターではワインの苦みとアスパラの苦味が余韻として綺麗に同調しました。この苦味を苦手に感じるスタッフもいましたが、そもそも苦味を楽しむ食材でもあるため、アスパラの良さを活かしていると感じるスタッフの方が多数でした 。

白ワイン

[国 産]

表を見ていただいて分かる通り、白ワインはほぼ全てのワインを合わせることができるという驚異的な結果になりました! 特に良かったのが、両方イタリア、アルト・アディジェの 9. Pinot Grigio / Traminと 10. Gewurztraminer / Tramin でした。 9. Pinot Grigio / Tramin は、塩のみで食べた時には国産アスパラの繊細さ、甘さ、ハーブ感を引き出し、五味の合っている要素が多くて共鳴しているように感じました。味付けの塩味とワインのミネラルも良く合い、ワインの酸が余韻を引っ張って爽やか&軽やかに抜けていく感じがとても良い印象でした。オランデーズを掛けると、ソースとワインのテンションがぴったり合って同化し、最後にアスパラの存在感が浮き上がってくるような面白いマリアージュが体験できました。嫌いな方はほとんどいない万人受けする組み合わせだと思います。 10. Gewurztraminer / Tramin はオランデーズでNo.1になりました。ソースの酸と塩味、クリーミーさ、コクとアスパラの繊細さに、ゲビュルツトラミネール特有の華やかな香りや果実味、ミネラルと酸から来る涼やかさ、テクスチャーが抜群に合っており、モダンなマリアージュでした。ゲヴュルツのアロマティックさが苦手な方もいらっしゃると思いますが、ぜひ試していただきたい組み合わせです。

[ロワール産]

ロワール産も国産同様にほぼ全てのワインを合わせることができましたが、塩のみとオランデーズでベストマリアージュのワインが分かれました。 塩のみでいただく場合は、 9. Pinot Grigio / Traminと 10. Gewurztraminer / Tramin が同率1位と国産xオランデーズと同じ結果になりました。Pinot Grigio は、アスパラの旨味や甘味と同調して増幅させ、素材を最大限活かすマリアージュでした。比較的ニュートラルなワインなので料理の邪魔をせず、「最高の影武者」だという声もありました。対して Gewurztraminer はワインのライチやバラの香り、苦味、オイリーなテクスチャーがスパイスのような作用をして、アスパラの甘味を引き立てながら別の料理に昇華させる個性的なマリアージュを見せてくれました。 オランデーズの場合は、11. Pinot Blanc Haus Klosterberg / Markus Molitor と 12. Gruner Veltliner Ried Klostersatz / Pichler Krutzler が同率1位となりました。Pinot Blanc はワインの美しい酸と柑橘の香りがソースの酸と同調し、ワインの果実由来の甘味とソースのまろやかさが活かされるキレイなマリアージュでした。艶が出たように感じたのもとても良かったです。Gruner Veltliner はワインの苦味がアスパラの苦味と同調するとともに、テクスチャー・オイリーさ・果実味といった要素がソースに非常に合っており、ふくよかさと苦味を楽しませてくれました 。

ロゼ & 赤ワイン

白ワインとは対照的に、総じて厳しい結果になったのがロゼ&赤ワインでした。特に赤ワインは、アスパラがワインに負ける、特有のフルーティーさが全く合わない、タンニンが浮く、青さが際立つ、、など散々な結果となりました。
唯一 23. Caprice de Clementine Rose / Ch. Les Valentines は、特に国産x塩ではワインの瑞々しい甘味がホワイトアスパラの甘味を引き立て、ワインのミネラルがアスパラの味わいをイキイキと感じさせてくれました。オランデーズソースともワインの酸とソースのまろやかさが補完し合って悪くない組み合わせでした。

雑 感

これまで様々な食材でマリアージュ実験を行ってきましたが、今回はいくつもの驚きがある結果となりました。 まず、こんなに白ワイン全般に合う食材がかつてあったでしょうか!ホワイトアスパラの甘味や苦味、ミネラル感、テクスチャーの柔らかさがそもそも多くの白ワインに共通するものなので合いやすかったのだと思います。同率1位が複数ありましたが、各組み合わせがそれぞれの個性を際立たせた素晴らしいマリアージュだったため、1つに絞ることが難しかった結果です。 逆にスパークリングワインが振るわない結果だったこと、赤ワインが全滅だったことも意外でした。 そして、これまで全く出番のなかったゲヴュルツトラミネールが1位に輝く日が来るとは!!ゲヴュルツの個性はしっかり活かしながらアスパラの良さも引き上げてくれる理想的なマリアージュを体験することができて感無量でした。

結果を補足するならば、今回一番のポイントだったのは「苦味を楽しめるかどうか」という点です。味覚としては苦手なスタッフも多くいましたが、本来ホワイトアスパラは苦味も魅力の一つですので、食材由来の苦味がバランス良く発揮されている場合にはポジティブなものとして捉えています。
また、オランデーズソースは味が強いので国産もロワール産もそれぞれの個性を覆い隠してしまう傾向で、ワイン選びもソースに合うかどうかが主になってしまったように思います。特に国産アスパラは生で食べられるくらいフレッシュで繊細な味わいのため、塩で食べた方が美味しい、オランデーズソースが合ってない、という意見もありました。

まさに今が旬の食材ですので、この結果を参考にぜひ皆さんのお好みの組み合わせを見つけてみてください!

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