鰻の白焼と蒲焼に合うワインとは?(広報 浅原有里)

鰻の白焼と蒲焼に合うワインとは?(広報 浅原有里)
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今年も猛暑になるだろうとの予想が発表されていますが、夏バテ防止に食べたくなるのが鰻ですよね。今年は「土用の丑の日」が7月24日(一の丑)、8月5日(二の丑)と2回あり、注目度が更に増すかもしれません。
皆さまは、そんな鰻に合わせるワインというと何が思い浮かぶでしょうか?

今回のマリアージュ実験では、横浜・関内にある「うなぎと炭焼 久松」様の協力の元、天然と養殖の2種類の鰻をご用意いただき、白焼と蒲焼という異なる焼き方で調理いただいたものを、27種類のワインと合わせて検証してみました。


鰻について

天然鰻は琵琶湖産、養殖鰻は浜名湖産をご用意いただきました。 どちらも身が厚く旨味が豊富で味わいも強かったのですが、比べてみると、天然は筋肉質で噛み応えがあり脂はそれほど多くないさっぱりとした味わいでした。養殖は天然に比べると脂があってどっしりしていますが、癖は強くなく柔らかで繊細だと感じました。 尚、白焼にはわさびを、蒲焼には山椒を、ほのかに香る程度に少し付けて食べています。

マリアージュの判断方法

「ボリューム」「テクスチャー」「フレーバー」「五味(甘味・酸味・塩味・苦味・旨味)」について、以下のマリアージュポイントを参考にしながら分析します。

同調 (ワインと料理の個性の一部が寄り添うことで双方を高め合う)中和 (お互いの個性を中和させて味わいのバランスをとる)補完 (ワインと料理の双方が揃うことで、足りなかったものを補完する)

※マリアージュ理論の詳しい内容は以下よりご覧ください。

https://firadis.net/column_pro/201312/

ワインについて

今回は営業中の店舗での開催だったため、ワインは合いそうだと予想されるものを絞り、スパークリングが5種類、白ワイン12種類、赤ワイン10種類の計27種類用意しました。

No. Vintage 商品名  産地/品種 熟成 希望小売価格
スパークリングワイン
1 NV Cremant du Jura Brut / Philippe Vandelle 仏、ジュラ/シャルドネ100% ステンレスタンクで発酵、瓶内熟成24ヶ月以上(ドサージュ量 : 6.4g/L) ¥3,400
2 NV Brut / Bernard Bremont 仏、シャンパーニュ/ ピノ・ノワール70%, シャルドネ30% ホーロータンクで発酵、瓶内熟成24ヶ月以上(ドサージュ量 : 8g/L) ¥6,700
3 NV Blanc de Noirs / Etienne Lefevre 仏、シャンパーニュ/ ピノ・ノワール100% 24ヶ月(ドサージュ量 : 6g/L) ¥7,500
4 NV Carte Or / Claude Cazals 仏、シャンパーニュ/ シャルドネ100% ステンレスタンクで発酵、瓶内熟成60ヶ月(ドサージュ量 : 7g/L) ¥7,600
5 NV Cuvee Rosee / Jean Lallement ※ロゼ 仏、シャンパーニュ/ ピノ・ノワール100% ホーロータンクで発酵、瓶内熟成30ヶ月以上(ドサージュ量 : 4g/L) ¥8,800
白ワイン
6 2022 Gruner Veltliner Felix / Weszeli オーストリア、カンプタル/ グリューナー・フェルトリーナー100% ステンレスタンクで発酵、澱と共に5ヶ月熟成(残糖量 : 2.5g/L) ¥3,000
7 2022 Gruner Veltliner Ried Klostersatz / Pichler Krutzler オーストリア、ヴァッハウ/ グリューナー・フェルトリーナー100% ステンレスタンク&900L樽で発酵、澱と共に5ヶ月熟成(残糖量 : 1.0g/L) ¥4,950
8 2022 Riesling Tradition / Emile Beyer 仏、アルザス/リースリング100% ステンレスタンクで澱と共に7ヶ月(残糖量 : 2.5g/L) ¥3,350
9 2022 Frascati Rubbie / Vallechiesa 伊、ラツィオ /マルヴァジア・デル・ラツィオ50%, マルヴァジア・ディ・カンディ20%, グレコ15%, トレッビアーノ・トスカーノ15% ステンレスタンクで発酵、澱と共に4ヶ月熟成 ¥2,000
10 2022 Soave Classico / Gini 伊、ヴェネト/ガルガーネガ100% ステンレスタンクで発酵、澱と共に6ヶ月熟成 ¥3,400
11 2019 Just B / Just B Wines 西、リアス・バイシャス/ アルバリーニョ100% ステンレスタンク発酵、澱と共に3ヶ月熟成 ¥3,500
12 2022 Sancerre / Terres Blanches 仏、ロワール/ソーヴィニヨン・ブラン100% ステンレスタンクで発酵、澱と共に6ヶ月熟成 ¥5,100
13 2022 Macon Terroir Lamartine / Famille Cordier 仏、ブルゴーニュ/シャルドネ100% 木製タンクで澱と一緒に発酵、熟成 ¥3,850
14 2021 Bourgogne Blanc Femelottes / Nicolas Gauffroy 仏、ブルゴーニュ/シャルドネ100% バリック12ヶ月(新樽15%)後、ステンレスタンク2ヶ月 ¥4,900
15 2022 Freakshow Chardonnay / Michael David 米、カリフォルニア/シャルドネ100% フレンチ/アメリカン・バリック&ステンレスタンクで発酵、5ヶ月熟成(新樽74%) ¥3,850
16 2021 Rosenegert / Hering 仏、アルザス/リースリング50%, ピノ・グリ20%, ゲヴュルツトラミネール20%, ミュスカ・オットネル5%, ピノ・ブラン5% ステンレスタンクで澱と共に10ヶ月(残糖量 : 7.5g/L) ¥4,250
17 2021 Grauburgunder Oberbergener Bassgeige Erste Lage / Franz Keller 独、バーデン/ グラウブルグンダー(ピノ・グリ)100% ステンレスタンク&大樽で発酵、澱と共に14ヶ月熟成 ¥4,300
赤ワイン
18 2021 Santenay V.V. / Lucien Muzard 仏、ブルゴーニュ/ピノ・ノワール100% コンクリートタンクで発酵、バリック(新樽10%)で12ヶ月熟成 ¥5,700
19 2022 California Pinot Noir / Stone Field 米、カリフォルニア/ピノ・ノワール100% フレンチオークで7カ月熟成 ¥2,300
20 2020 Chinon Silenes / Charles Joguet 仏、ロワール/カベルネ・フラン100% ステンレスタンクで発酵、18ヶ月熟成 ¥3,650
21 2021 Rosso di Montalcino Campo di Marzo / Il Valentiano 伊、トスカーナ/ サンジョヴェーゼ・グロッソ100% ステンレスタンクで発酵、スラヴォニアオークの大樽12ヶ月熟成 ¥3,100
22 2021 Silver Label (12 Meses) / Juan Gil 西、フミーリャ/モナストレル100% ステンレスタンクで発酵、フレンチオークのバリック12ヶ月熟成(新樽1/3) ¥3,300
23 2020 Seigneurs d’Aiguilhe 仏、ボルドー/ メルロー90%, カベルネ・フラン10% ステンレスタンクで発酵、バリック6ヶ月熟成後、ステンレスタンク9ヶ月熟成 ¥3,600
24 2015 Ch. Suau Cadillac Rouge 仏、ボルドー/メルロー70%, カベルネ・ソーヴィニヨン20%, カベルネ・フラン10% バリック12ヶ月(新樽30%) ¥3,650
25 2019 Barbera d’Asti / Frasca 伊、ピエモンテ/バルベーラ100% ステンレスタンクで発酵、5~7ヶ月熟成 ¥3,800
26 2022 Langhe Nebbiolo Capisme E / Domenico Clerico 伊、ピエモンテ/ネッビオーロ100% 90%はステンレスタンク,10%はアンフォラで10~12ヶ月熟成 ¥5,200
27 2021 Saint Joseph Rouge Ribaudes / Lionel Faury 仏、ローヌ/シラー100% 600L(新樽5%) & 3000L樽17ヶ月熟成 ¥5,300

結 果

白 焼

▶ 天 然

◎ 4:NV Carte Or / Claude Cazals

天然の鰻はそれほど脂が多くないため、スパークリングワインの中でも強い酸味やピノ・ノワール多めのワインにありがちな重さは必要なく、ブラン・ド・ブランが良く合いました。マリアージュとしても、何かが目立つというより非常にバランス良く鰻と調和し、旨味を広げ、繊細な味わいを引き立ててくれました。

◎ 14:2021 Bourgogne Blanc Femeiottes / Nicolas Gauffroy

鰻とワインの要素がぴたりと合致しており、甘味・旨味・酸味・香りなどすべてが強調され引き上げられていました。特に鰻の香ばしさとワインのクリスピーさのマッチングが素晴らしく、鰻の食べ応えのある味わいを存分に活かすようなマリアージュでした。

◯ 10:2022 Soave Classico / Gini

鰻の焼いた脂の香ばしさとワインのほろ苦さが同調し、筋肉質な身をワインのボディがしっかり支えてくれるため、一緒に味わった時の一体感が心地よいマリアージュ。さっぱりと食べられる組み合わせでした。

◯ 24:2015 Ch. Suau Cadillac Rouge

赤ワインでは唯一のエントリー。鰻に味わいや旨味の強さ、噛み応えがあるため、赤ワインにも負けることはありませんでした。果実味が強いワインはなかなか難しかったのですが、熟成による複雑さがあるため味わいが補完される印象で美味しく合わせることができました。

養 殖

◎ 3:NV Blanc de Noirs / Etienne Lefevre

シャンパーニュは悪いものはなくどれもそれぞれ良さがあったのですが、特にピノ・ノワールの割合が大きいものの方が合いました。特にブラン・ド・ノワールは、身のふんわりとした柔らかな食感や脂をワインの骨格や酸味が下支えして味わいのバランスを整えるようなイメージで、特に後半にお互いの要素が溶け合って綺麗な余韻がすーっと長く続いていくという素晴らしいマリアージュでした。

◯ 14:2021 Bourgogne Blanc Femeiottes / Nicolas Gauffroy

天然と同様に鰻とワインの味わいの各要素やテクスチャー、バランス感などが美しく重なり、お互いを活かし合うようなマリアージュでしたが、天然に比べるとアフターに少しだけワインの樽感が残ってしまうのが残念でした。


白焼では、シャンパーニュがいずれも一定以上の評価を得ましたが、さっぱりとして旨味の強い天然鰻には繊細なブラン・ド・ブランが合い、脂が多くどっしりとした養殖鰻には脂を切ってくれる酸味やタンニンを持つブラン・ド・ノワールが特に合うことが分かりました。
白ワインでは、アロマティックなワインは香りが邪魔をしてしまうためNGでしたが、鰻に負けない強さや厚みのあるワインがマッチしました。
白焼がシンプルな味付けのため、赤ワインは大苦戦。果実味のベリー感が強いワインは鰻の味わいを覆ってしまい難しい結果となりました。

蒲 焼

▶ 天 然

◎ 21:2021 Rosso di Montalcino Campo di Marzo /Il Valentiano

サンジョヴェーゼ特有の果実の甘味や柔らかさが蒲焼の鰻に非常に良く合い、ワインの持つ“照り”ともいうべき滑らかさや艶やかな質感が鰻の身の柔らかさや脂、蒲焼のタレと同調しました。欠点のない素晴らしいマリアージュでした。 鰻の味わいが強くて複雑だったため、ロッソではなくブルネッロの方がより良かったのではないかとも感じました。

◎ 25:2019 Barbera d’Asti / Frasca

モダンなつくりのバルベーラ。旨味が強く、果実味の厚みがあり、つるっとした質感のワインのため、鰻の繊細な味わいを殺さず、パリッとした皮の質感にもとても合いました。お互いの持つ要素が主張しながらも調和が取れているという、絶妙かつおしゃれなマリアージュでした。

◯ 5:NV Cuvee Rosee / Jean Lallement

どのスパークリングワインも悪くはなかったのですが、鰻の香ばしさ+タレの味わいにどうしてもタンニンが欲しくなる中、最も合ったのがロゼシャンパーニュでした。ワインの硬さやミネラル感が少し突出して感じてしまったためベストとはなりませんでした。

▶ 養 殖

◎ 21:2021 Rosso di Montalcino Campo di Marzo / Il Valentiano

養殖鰻でもサンジョヴェーゼがNo.1という結果になりました!ワインの柔らかさや旨味が鰻の脂やふんわりとした身とタレの味わいにマッチしており、総合点が高い秀逸なマリアージュでした。 天然鰻と同様に、果実の厚みと複雑さのあるブルネッロの方が、鰻に更にレベル高く合わせられたのではないかと思われます。

◎ 20:2020 Chinon Silenes / Charles Joguet

シノンの香りが、癖のない養殖鰻の味わいとふわりと香る山椒に良く合いました。また、ワインの穏やかで旨味が詰まった味わいや柔らかで滑らかな質感が、鰻の柔らかかつ脂の乗った味わいにマリアージュしました。

◯ 3:NV Blanc de Noirs / Etienne Lefevre

白焼と同様に、養殖鰻ではブラン・ド・ノワールが高評価に。鰻の味わいにワインの酸味や果実味、タンニンなどの要素が足され、一段階上に引き上げられるような良さが感じられました。タレのニュアンスが加わったことで、アフターで若干ワインのミネラル感や酸味がくどく感じるという意見があったため◯としています。

◯ 5:NV Cuvee Rosee / Jean Lallement

鰻とワイン双方の旨味や甘味が寄り添っており、鰻の脂をワインのタンニンが上手に中和して美味しく味わうことができました。こちらも若干ワインのミネラル感や硬さが気になるという意見がありました。


今回の蒲焼のタレは、一般的なイメージよりもさらっとした綺麗な味わいだったため、白ワインが大苦戦。タレに合わせることができず、物足りなさや方向性の違いを感じてしまい、高評価は得られませんでした。
スパークリングについては、シャンパーニュはいずれも悪くはないのですが、タンニンが必要になるためブラン・ド・ノワールやロゼの方が良い結果となりました。
そして蒲焼にはやはり赤ワインが本領発揮!!味わいが硬かったり、タンニンが目立つワイン、またヨード香があるワインは難しかったのですが、滑らかな質感で穏やかながら果実の厚みのある赤ワインが素晴らしいマリアージュを見せてくれました。


鰻のお刺身や肝焼きなども楽しみました♪

今回伺った「うなぎと炭焼 久松」様では鰻の薄造りやお寿司、肝焼きなども含めた鰻のフルコースをいただきました。

薄造りには、4:NV Carte Or / Claude Cazals や 6:2022 Gruner Veltliner Felix / Weszeli がベストマッチ!癖がなく、もちっとした食感のお刺身とポン酢に、旨味が強く、綺麗なミネラル感があるワインが良く合いました。

また肝焼きには、5:NV Cuvee Rosee / Jean Lallement がマリアージュしました。タレが強すぎないため肝の美味しさをダイレクトに味わえるお料理に対し、臭みが出たり、タンニンや果実味、香りが悪目立ちしてしまうワインが多い中、ドライでミネラルがしっかりあるロゼシャンパーニュが好相性でした。


ワインを合わせるイメージがあまりない鰻ですが、実は幅広いワインと一緒に楽しむことができることが分かりました!
今回の結果を、皆さまのワインライフの参考にしていただけたら幸いです。

(ご協力)

横浜市・関内の割烹うなぎと炭焼 久松

〒231-0043
神奈川県横浜市中区福富町仲通38−4
末廣ビルNo.3 1F
070-9021-5813

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